大きな地震のニュースが流れた夜、院内のDMAT登録者に待機の連絡が入る。あるいは医師会からJMATの参加者募集が回ってくる。行く気はあっても、頭の片隅に「現地でけがをしたら労災になるのか」「手当は出るのか」「個人で駆けつけたら何の補償もないのか」という疑問が残る医師は多いと思います。この記事では、日本DMAT活動要領(令和7年7月22日改正)、災害救助法と同法施行令、災害対策基本法、医療法、労災保険法、地方公務員災害補償法、JMAT要綱の本文を実際に読み、補償の仕組みを「誰の命令で、誰の業務として行くか」という一つの軸で整理します。個別の事故への助言ではなく、制度の文言で何が決まっていて何が決まっていないかを確かめるための記事です。
先に答え:補償の出どころは「派遣の形」で5通りに分かれる
災害派遣の医師の補償は、一つの制度でまとめて決まっているわけではありません。どの立場で現地に行ったかによって、適用される法律も、費用を払う主体も、事故が起きたときの窓口も変わります。整理すると次の5通りです。
| 派遣の形 | 事故時の主な補償 | 活動費用の出どころ | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ①所属病院の業務として出張(DMATの通常の形) | 労災保険(公立病院の常勤職員は地方公務員災害補償) | 都道府県と病院の協定に基づき支弁 | 日本DMAT活動要領、労災保険法、地公災法 |
| ②都道府県の要請・協定に基づく派遣(災害・感染症医療業務従事者を含む) | ①と同じく所属先の業務災害が基本。補償の具体は協定で定める | 都道府県が支弁(医療法30条の12の8) | 医療法、日本DMAT活動要領 |
| ③災害救助法の従事命令 | 扶助金(療養・休業・障害・遺族・葬祭・打切) | 命令を出した都道府県等が実費弁償 | 災害救助法7条・12条・18条、同法施行令 |
| ④医師会のJMAT | 日本医師会の傷害保険への加入が要綱に明記。勤務医は所属先の扱いも確認が必要 | 要綱細則・医師会の定めによる | JMAT要綱 |
| ⑤個人ボランティア | 労災保険は労働者が対象のため原則として届かない。公的な補償規定は確認できなかった | 自己負担が基本 | 労災保険法、災害救助法8条 |
この表の読み方の要点は一つです。補償は「医師である」ことではなく「誰の指揮下で、誰の業務として動いたか」に付いてくるということです。DMAT隊員証を持っていても、要請のない自主的な出動であれば、費用も補償も①の枠には乗りません。逆に、DMATでなくても都道府県知事の従事命令を受ければ③の扶助金の対象になります。
以下、ルートごとに条文と要領の文言で確かめていきます。
ルート①:DMATは「所属病院からの派遣」が原則
活動要領は派遣の主体を医療機関に置いている
日本DMAT活動要領は、DMATの活動を次のように定義しています。「DMATは、都道府県等の派遣要請を受け、DMAT指定医療機関から派遣され、活動を行う。DMATの活動は、DMAT指定医療機関に所属しているDMAT登録者により実施される。」(日本DMAT活動要領 Ⅱ-4)
つまりDMAT登録者は個人として被災地に入るのではなく、DMAT指定医療機関の職員として派遣されるという建て付けです。1隊は「医師1名、看護師2名、業務調整員1名の4名を基本とする」とされ、1次隊の活動期間は「移動時間を除き概ね48時間以内を基本とする」とされています(同要領 Ⅱ-1、Ⅰ-2)。
要領はまた、派遣の前提として「DMATの派遣は被災地域の都道府県の派遣要請に基づくものである」と書いています。ただし続けて、厚生労働省は当分の間、被災地域の都道府県から要請がなくても、緊急の必要があると認めるときは都道府県等にDMATの派遣を要請できるとしています(同 Ⅰ-2)。
補償は「協定に含めるもの」とされている
医師にとって最も重要なのが次の箇所です。要領は、都道府県とDMAT指定医療機関等の協定に含める事項として、要請方法・指揮系統・業務・ロジスティクス・活動費用と並べて、「DMATに参加する要員の身分の取扱いとDMAT活動における事故等への補償」を挙げ、括弧書きで「補償は、自然災害や事故による負傷、感染症や精神疾患への罹患等においても対応することが求められる。」と付記しています(同要領 Ⅲ-2)。
ここから読み取れることは二つです。一つは、事故時の補償の具体的な中身は要領そのものではなく、都道府県と病院の協定に委ねられていることです。要領に補償額は書かれていません。もう一つは、補償の範囲として負傷だけでなく感染症や精神疾患への罹患まで想定することが「求められる」とされている点です。これは要領が示す指針であって、要領自体が個々の医師への給付を約束する規定ではありません。自院の協定にこの範囲が実際に書かれているかは、派遣前に確かめる価値があります。
民間・公的病院の職員なら労災保険の「出張」として扱われる
病院の業務として派遣される以上、事故の補償の土台は所属先の労働災害補償です。労災保険法3条1項は「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」と定めています。
業務災害と認められるには業務遂行性が前提になります。出張中の扱いについて、石川労働局の解説は「出張の場合は、私用で寄り道したような場合を除き、用務先へ向かって住居又は事業場を出たときから帰り着くまでの全行程に亘って業務遂行性が認められます。」と説明しています(厚生労働省 石川労働局「業務災害について」)。DMATとしての移動中や被災地での待機中も、病院の業務としての出張の範囲に入るかどうかが判断の出発点になります。
ここで注意したいのは、業務遂行性が認められても、それだけで業務上と決まるわけではない点です。同じ解説は、業務遂行性を前提に業務起因性が認められなければならないと整理しています。私的な寄り道中の事故などは別に判断されます。
なお、針刺し事故など院内で起きる労災の基本的な流れは「医師の針刺し事故と労災」で詳しく整理しています。災害派遣先での曝露も、所属病院の業務として派遣されている限り、同じ労災の枠組みで考えることになります。
公立病院の常勤医は労災ではなく地方公務員災害補償
公立病院に常勤で勤める医師の場合、窓口が変わります。地方公務員災害補償法67条2項は「労働者災害補償保険法の規定は、職員に関して適用しない。」と定めています。同法2条の「職員」には、常時勤務に服することを要する地方公務員や一般地方独立行政法人の常勤職員が含まれます。
この場合、災害派遣中の事故は公務災害として地方公務員災害補償基金に認定請求します。長野県の案内では、出張中に被災したときは出張命令簿の写しを添付書類として提出することになっており、命令簿を作っていない軽易な出張では、用務内容・日時・用務場所を書いた「出張証明書」に所属長の証明を受けて提出するよう求めています(長野県 公務災害Q&A Q10)。派遣の命令が書面で残っているかが、後の認定手続きに直結するということです。
DMATの費用は誰が払うのか
原則は「事前の協定に基づいて支弁」
補償と並んで気になるのが、活動にかかる費用と手当です。日本DMAT活動要領の「Ⅶ 費用の支弁」は、原則として「DMATを派遣したDMAT指定医療機関と都道府県との事前の協定に基づいて支弁されるものとする」と定め、続けて「被災都道府県の要請によらないDMATの派遣については、費用支弁は原則として行われない。」と明記しています。
この一文は重い意味を持ちます。DMAT登録者であっても、被災地の要請という手続きを経ずに出動した場合、費用は原則として公費の支弁の対象外になるということです。
災害救助法が適用されるかどうかで精算ルートが変わる
要領は、災害救助法が適用された場合と適用されない場合で精算の流れを分けています。
災害救助法が適用された場合、被災地の都道府県からの派遣要請を受けた都道府県が、協定に基づいて管内のDMAT指定医療機関に費用を支弁したときは、その費用を災害救助法に基づいて被災地の都道府県に求償できるとしています。適用されない場合は、被災地の都道府県が「医療施設等運営費補助金交付要綱」のDMAT活動支援事業に係る経費を、派遣元の医療機関または派遣元の都道府県に支弁する仕組みです(同要領 Ⅶ-2、Ⅶ-3)。
医師個人から見ると、費用はまず病院と都道府県の間で精算されるということです。医師の手元に届くのは、病院の給与規程・出張旅費規程に基づく給与や出張手当です。「災害派遣手当」のような名目でいくら出るかは、法令や要領ではなく各病院の規程で決まります。要領には個人の手当額は書かれていません。
ルート②:医療法の「災害・感染症医療業務従事者」と協定
令和4年改正で国の登録制度が法律に入った
令和4年の医療法改正で、災害・感染症医療確保事業に係る人材の確保の節が設けられました。医療法30条の12の2第1項は、厚生労働大臣が、都道府県知事の求めに応じて、災害が発生した区域や感染症がまん延した区域などに派遣されて医療の確保に係る業務に従事することを承諾した者を、「災害・感染症医療業務従事者」として登録するものとしています。対象は医師、看護師その他の必要な知識と技能を持つ者で、厚生労働大臣が実施する研修の課程を修了したことなど、省令で定める基準を満たす者に限られます。
派遣・費用・業務内容は都道府県と病院の協定で決める
医療法30条の12の6第1項は、都道府県知事が、域内の病院または診療所の管理者と協議し、合意が成立したときに協定を締結するものとしています。協定に含める事項として、災害・感染症医療業務従事者またはその一隊(医療隊)の派遣の求めと派遣に関すること、派遣する者が行う業務の内容、派遣に要する費用の負担の方法、協定の有効期間などが列挙されています。
費用の負担について、医療法30条の12の8第1項は、法令に特別の定めがある場合や予算の範囲内で特別の措置を講じている場合を除き、協定に基づく派遣に要する費用は都道府県が支弁するものとしています。
ここでも、派遣は「病院の管理者と都道府県の協定」に基づくという構造で、医師は所属病院の職員として派遣されます。医療法のこの節には、派遣された個人の負傷に対する給付の規定は置かれていません。事故時の補償は、ルート①と同じく所属先の労災保険(または公務災害補償)が土台になり、上乗せの扱いは協定次第ということになります。
なお、この協定の締結は管理者の合意が前提で、30条の12の6第8項以下の勧告・指示・公表は、協定を結んだ病院が「正当な理由がなく」協定上の措置を講じない場合の規定です。協定を結ぶこと自体を強制する条文ではありません。
ルート③:災害救助法の従事命令と扶助金
知事は医師に「従事命令」を出せる
ルート①②は病院の業務としての派遣でした。これとは別に、都道府県知事が医師個人に直接、救助の業務への従事を命じる仕組みがあります。災害救助法7条1項は、都道府県知事等が、救助を行うため特に必要があると認めるとき、医療・福祉・土木建築工事・輸送の関係者を救助に関する業務に従事させることができると定めています。範囲は政令で定めるとされ、同法施行令4条1号の筆頭に「医師、歯科医師又は薬剤師」が挙げられています。
7条4項は5条2項を準用しており、従事命令の際には公用令書を交付することになっています。また災害対策基本法71条は、都道府県知事が応急措置の実施のため特に必要があると認めるときに、災害救助法7条から10条までの規定の例により従事命令等を発することができると定めています。
実費弁償は「しなければならない」義務規定
従事命令による従事には、費用と事故の両面で法律上の手当てがあります。災害救助法7条5項は「第一項又は第二項の規定により救助に従事させる場合においては、その実費を弁償しなければならない。」と定めています。「しなければならない」という書き方で、都道府県等の義務です。
実費弁償の具体的な基準は、施行令5条により、内閣総理大臣が定める基準に従ってあらかじめ都道府県知事等が定めることになっています。実費弁償を負担するのは、同法18条2項により、従事命令を発した都道府県知事等の統括する都道府県等です。
なお、災害救助法による「医療」の救助そのものは、内閣府の資料によれば原則として救護班により行い、救助期間は災害発生の日から14日以内、救護班の対象経費は使用した薬剤・治療材料・破損した医療器具の修繕費等の実費とされています(内閣府「災害救助法の概要(令和8年6月)」)。これは医療の提供に要する費用の基準で、従事した医師個人への報酬額を定めたものではありません。
扶助金は6種類、額は「支給基礎額の何倍か」で決まる
事故の側について、災害救助法12条は「第七条又は第八条の規定により、救助に関する業務に従事し、又は協力する者が、そのために負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合においては、政令の定めるところにより扶助金を支給する。」と定めています。
施行令7条は扶助金を療養扶助金、休業扶助金、障害扶助金、遺族扶助金、葬祭扶助金、打切扶助金の6種類としています。療養扶助金以外は「支給基礎額」を基準に支給され(施行令8条1項)、支給基礎額は、労働基準法上の労働者である従事者については事故発生日等を基準に同法12条で算定した平均賃金の額、労働者でない従事者については通常得ている収入の額を基準に都道府県知事等が定める額とされています(施行令8条2項)。後者には、その地方で同様の業務に従事する者が通常得ている収入の額(標準収入額)を超えるときは標準収入額を基準とする上限があります。
施行令に書かれている倍数は次のとおりです。休業扶助金は休業1日につき支給基礎額の100分の60(施行令10条1項)、障害扶助金は第1級で1,340倍から第14級まで等級別(11条3項)、遺族扶助金は1,000倍(12条)、葬祭扶助金は60倍(14条)、打切扶助金は療養開始後3年を経過しても治らない場合に1,200倍を支給できる(15条1項)とされています。
他の給付があれば、その分は出ない
見落とされやすいのが調整規定です。施行令16条1項は「扶助金の支給を受けるべき者が他の法令(条例を含む。)による療養その他の給付又は補償を受けたときは、同一の事故については、その給付又は補償の限度において、扶助金を支給しない。」と定めています。労災保険など他の法令の給付を受けた場合、扶助金はその限度で支給されません。扶助金と労災の二重取りにはならない、という理解が正確です。
また休業扶助金には、業務上の収入を引き続き受けられる期間は支給しない(その収入が休業扶助金より少ないときは差額を支給する)という規定もあります(施行令10条2項)。勤務先から給与が出続ける医師の場合、休業扶助金の実益は限られる可能性があります。
災害対策基本法の従事命令は条例で損害補償
災害対策基本法71条の従事命令で応急措置の業務に従事した者が死亡・負傷等をしたときは、同法84条2項により、都道府県が政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより損害を補償しなければならないとされています。こちらも「しなければならない」の義務規定です。具体的な補償の中身は各都道府県の条例を確認する必要があります。
ルート④:JMATは医師会の枠組み
日本医師会のJMAT(日本医師会災害医療チーム)は、行政の要請・協定に基づくDMATとは別の、医師会の組織的な枠組みです。JMAT要綱(日本医師会。PDF本文に日付表示はなく、ファイル名の日付は2026年1月1日)は、日本医師会JMAT本部の役割として、派遣業務や国・関係団体との連携と並べて「経理・傷害保険・交通手段・宿泊関係・物資等の活動支援」を一元的に集約すると記載しています。傷害保険の手配が医師会の本部機能として位置づけられているということです。
ただし、要綱本体には保険金額や手当の額は書かれていません。派遣手続等は「JMAT要綱細則に定める」とされています(JMAT要綱 Ⅴ)。この記事の作成時点で、補償額を記した細則の公開版には到達できなかったため、金額には触れません。参加時には、都道府県医師会から示される保険の内容を確認してください。
勤務医がJMATに参加する場合、もう一つ確認すべきことがあります。病院がその参加を「業務としての出張」と扱うのか、休暇を取っての参加と扱うのかです。業務扱いであれば所属先の労災保険が土台になり、休暇扱いであれば医師会の傷害保険が主な備えになります。どちらに当たるかは要綱ではなく、所属病院の判断と書面で決まります。
ルート⑤:個人ボランティアは公的補償が薄い
最も補償が薄くなるのが、病院の命令も行政の要請もなく、個人として被災地に入るケースです。
労災保険法の業務災害は、労働者が事業主の支配下にある状態を前提にしています。石川労働局の解説も、労災保険の給付は労働者として雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われる、と説明しています。休暇を取って個人で参加した活動は、所属病院の業務とは言いにくく、原則として労災保険の対象外と考えるのが自然です。
災害救助法の扶助金も、対象は7条の従事命令を受けた者と8条の協力命令を受けた者です。8条1項の協力命令の対象は「救助を要する者及びその近隣の者」、2項は登録被災者援護協力団体です。外部から個人で駆けつけた医師がそのまま扶助金の対象になる条文は、確認した範囲では見当たりませんでした。
このため、個人で活動するなら、民間の傷害保険やボランティア向けの保険で自ら備えるほかありません。診療行為を行うなら賠償責任の備えも別に必要で、勤務医の医師賠償責任保険が院外の活動をどこまでカバーするかは契約によります。この点は「勤務医の医師賠償責任保険」で整理しています。
派遣前に確認したい3つの書面
ここまでの整理から、派遣前に医師が手元で確認できることは、実は多くありません。ただし次の3点を押さえておくだけで、事故が起きたときの手続きの難易度は大きく変わります。
一つめは派遣命令の書面です。病院の業務として行くなら出張命令、従事命令なら公用令書がそれにあたります。公務災害の認定でも労災の認定でも、「誰の指揮下で何の用務だったか」を示す書面が出発点になります。電話一本で出発する場面もありますが、事後でも命令簿や出張証明書を整えてもらうことが重要です。
二つめは協定の補償条項です。DMAT指定医療機関であれば、都道府県との協定に「身分の取扱い」と「事故等への補償」が含まれているはずです(日本DMAT活動要領 Ⅲ-2)。感染症や精神疾患への罹患まで対象になっているかを、平時のうちに事務部門に確認しておくと安心です。
三つめは自分の上乗せの備えです。公的な補償が受けられても、長期の療養になった場合の収入の減り方は、所属先の制度と自分の保険で変わります。私傷病を含む収入保障の考え方は「医師の傷病手当金」と「医師に生命保険は必要か」で解説しています。
よくある誤解を条文で確かめる
「DMAT隊員なら自動的に補償される」は正確ではない
DMAT登録者という資格だけで補償が付くわけではありません。要領上、補償は都道府県と病院の協定の事項であり、派遣は被災地の要請に基づくのが原則です。要請によらない派遣では費用支弁も原則として行われません。資格ではなく、正規の要請と病院からの派遣という手続きが補償の前提です。
「扶助金と労災の両方がもらえる」も正確ではない
前述のとおり、施行令16条1項は他の法令による給付を受けた限度で扶助金を支給しないと定めています。労災の給付を受ければ、その限度で扶助金は出ません。
「公立病院の医師も労災を申請する」は窓口が違う
常勤の地方公務員である医師には、地方公務員災害補償法67条2項で労災保険法は適用されません。申請先は地方公務員災害補償基金です。非常勤の場合は扱いが異なることがあるため(同法69条1項は、法律による補償制度が定められていない「職員以外の地方公務員」について、条例で補償制度を定めることを地方公共団体に義務づけています)、自分の任用形態を確認してください。
まとめ:派遣の前に「誰の業務か」を一言で言えるようにしておく
DMATやJMATでの災害派遣は、医師としての使命感から引き受けるものです。だからこそ、出発前に「この派遣は誰の命令で、誰の業務か」を一言で言える状態にしておくことが、自分と家族を守る最小限の準備になります。
整理すると、病院の業務として派遣されるDMATなら所属先の労災保険(公立病院の常勤職員なら公務災害補償)が土台で、上乗せは協定次第です。知事の従事命令なら災害救助法の実費弁償と扶助金が法律上の義務として用意されています。JMATは医師会の傷害保険が組み込まれていますが、勤務医は所属先での扱いも確認が要ります。個人ボランティアは公的な補償が薄く、自分で備えるほかありません。
所属先の規程や協定の中身は、病院によって大きく違います。派遣への関わり方を含めて働く場所を見直すときは、判断材料を先に揃えておくと選択を誤りにくくなります。
参考資料
- 厚生労働省「日本DMAT活動要領の一部改正について」(令和7年7月22日 医政地発0722第2号)別添 日本DMAT活動要領
- 災害救助法(昭和22年法律第118号)第5条・第7条・第8条・第12条・第18条(e-Gov法令検索)
- 災害救助法施行令(昭和22年政令第225号)第4条・第5条・第7条〜第16条(e-Gov法令検索)
- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第71条・第84条(e-Gov法令検索)
- 医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4・第30条の12の2〜第30条の12の8(e-Gov法令検索)
- 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第3条(e-Gov法令検索)
- 地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第2条・第67条・第69条(e-Gov法令検索)
- 日本医師会「JMAT要綱」(ファイル名の日付2026年1月1日、2026年10月12日取得)
- 内閣府(防災担当)「災害救助法の概要(令和8年6月)」
- 厚生労働省 石川労働局「業務災害について」
- 長野県「公務災害 よくある質問(被災職員・地方公共団体用)」
