親が地域で診療所を続けてきて、自分は勤務医として別の病院にいる。いずれ相続が来ると分かっていても、医院の土地や建物、医療法人の持分がどう課税され、何をいつまでに決めればよいのかは、意外と整理されていないものです。この記事では、親の医院が「個人開設か、医療法人か(持分あり/なし)」で論点を分け、継ぐ場合と継がない場合の2ルートについて、税と手続きを時系列で並べます。数字と要件は2026年10月16日時点で、国税庁タックスアンサーとe-Gov法令検索の本文を開いて確認したものです。個別の判断は、必ず税理士と所轄の窓口に確認してください。

最初に見るのは「開設者は誰か」

親の医院の相続で論点を分けるのは、診療所の開設者です。開設者が親個人なのか、親が理事長を務める医療法人なのかで、相続の対象になる財産がまるで違います。

個人開設なら、診療所の土地・建物・医療機器・診療報酬の未収金まで、親個人の財産としてそのまま相続財産になります。土地については、後で詳しく見る小規模宅地等の特例が最大の論点です。

医療法人なら、法人の財産は法人のもので、親個人の相続財産ではありません。相続の対象になるのは、親が持っていた「出資持分」と、親個人が法人に貸している土地などです。ここで、法人の定款に持分の定めがあるかどうかが効いてきます。

医療法第44条第5項は、医療法人が残余財産の帰属先を定める場合、国・地方公共団体・医療法人その他の医療を提供する者のうちから選ぶよう定めています。2007年4月以降に設立された社団医療法人は、原則としてこの持分なしの形です。一方、それより前に設立され、定款に出資者への残余財産の分配を残している法人は「経過措置医療法人」と呼ばれ、持分ありのまま存続しています(国税庁 No.4150の注1による定義)。

図1: 親の医院の開設形態で相続の論点が分かれる判定フロー(概念図・国税庁No.4124/No.4150、医療法第44条をもとに作成)

整理すると、論点は3つの型に分かれます。

個人開設の型では、診療所の土地に特定事業用宅地等(400㎡まで80%減)を使えるかが中心です。持分ありの医療法人の型では、出資持分の評価額と、認定医療法人制度による納税猶予・税額控除が中心です。持分なしの医療法人の型では、持分そのものは相続財産になりにくく、親個人が法人に貸している土地や、親の役員退職金などの扱いが中心になります。

まず親の医院の登記事項や、保健所に出ている開設届の控えを見て、どの型かを確かめるところから始めてください。

相続税の骨格: 課税価格、基礎控除、税率

型ごとの論点に入る前に、相続税の計算の骨格を一度確認しておきます。後で出てくる「80%減」がどれだけ効くかを判断するためです。

国税庁 No.4152によると、相続税はまず財産を取得した人ごとに課税価格を出し、それを合計します。小規模宅地等の特例を使った土地は、減額した後の価額で合計に入ります。そこから基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を差し引いたものが課税遺産総額です。

課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定し、それぞれに速算表の税率をかけて合計したものが「相続税の総額」です(No.4155)。税率は1,000万円以下の10%から、6億円超の55%まで8段階あります。実際に誰が何を取得したかは、この総額を割り振る段階で初めて効いてきます。

申告と納税の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です(No.4102)。この「10か月」は、後で見る小規模宅地等の特例の事業承継要件の期限でもあります。税と診療所の手続きが、同じ10か月の中で並走することになります。

配偶者には、取得した正味の遺産額が1億6千万円か法定相続分相当額のどちらか多い金額までは相続税がかからない軽減があります(No.4158)。ただし、申告期限までに分割されていない財産は原則として軽減の対象になりません。医院の土地を誰が取るかの協議が長引くと、この軽減と小規模宅地等の特例の両方に影響します。

個人開設の医院: 診療所の土地は「申告期限までに継ぐ」が条件

個人開設の診療所の敷地は、小規模宅地等の特例のうち「特定事業用宅地等」に当たれば、400㎡まで評価額が80%減ります(No.4124、租税特別措置法第69条の4)。医院の土地が都市部にあれば、相続税額を大きく左右する特例です。

図2: 小規模宅地等の特例の区分と限度面積・減額割合(国税庁No.4124の表から作成)

要件は、その土地で誰が事業をしていたかで分かれます。親自身が診療していた土地なら、取得した親族が「その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること」が必要です(No.4124)。あわせて、その土地を申告期限まで持ち続ける保有継続要件もあります。

つまり、死亡から10か月以内に子が診療所を引き継ぎ、申告期限の時点でも診療を続けていなければ、80%減は使えません。勤務医の子が「いずれ継ぐつもりだった」というだけでは足りず、期限内に実際に開設者として診療している必要があります。

一方、親と生計を一にしていた子がすでにその土地で自分の医院を営んでいた場合は、相続開始の直前から申告期限まで事業を続けていればよいという事業継続要件になります。親子で同じ建物で診療している形などがこれに当たりえます。

注意したい点が3つあります。

第一に、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等は、原則として特定事業用宅地等から除かれます。ただし、その土地の上の建物や減価償却資産の価額が土地の価額の15%以上という一定規模以上の事業であれば、この除外は適用されません(No.4124の注2)。晩年に分院を開いた、移転したといった事情があれば確認が要ります。

第二に、特例の対象になりうる土地を取得した相続人が複数いる場合は、どの土地に特例を使うかについて全員が同意し、原則として申告期限までに分割されていることが必要です(No.4124の手続き欄)。

第三に、自宅の土地と組み合わせる場合の面積計算です。特定事業用宅地等(400㎡)と特定居住用宅地等(330㎡)だけを選ぶなら、両方合わせて730㎡まで使えます。貸付事業用宅地等(200㎡・50%減)を混ぜると、全体を200㎡に換算する調整式で限度面積を判定することになります(No.4124)。

個人版事業承継税制とは「どちらか一方」

個人開設の医院では、「個人版事業承継税制」も選択肢として名前が挙がります。国税庁 No.4153によれば、青色申告で事業をしていた被相続人から特定事業用資産のすべてを相続等で取得した後継者は、一定の要件のもとで相続税の納税が猶予されます。対象は宅地等(400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)、一定の減価償却資産です。

この制度は2019年1月1日から2028年12月31日までの相続等が対象で、後継者は2028年9月30日までに「個人事業承継計画」を都道府県知事に提出して確認を受けている必要があります(No.4153)。

医業が対象外かどうかは、根拠条文の租税特別措置法第70条の6の10を開いて確かめました。対象外とされている事業は、資産保有型事業、資産運用型事業、風営法上の性風俗関連特殊営業です。医業を名指しで除く文言は見当たりませんでした。後継者は中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の「中小企業者」として都道府県知事の認定を受ける必要があります。同法第2条は、業種ごとの従業員数などの基準を満たす「個人」を中小企業者に含めています。国税庁の通達解説(贈与版の従事要件の説明)にも、内科医院を営む親の例が出てきます。もっとも認定の可否は個別審査なので、都道府県の窓口で事前に確認してください。

もう一つ、後継者には相続開始の直前にその事業に従事していたことという要件があります(同条第2項第2号ロ。被相続人が60歳未満で死亡した場合は不要)。勤務医の子が該当するかも、あわせて確認が要ります。

重要なのは、この制度と小規模宅地等の特例の関係です。同条第2項第2号ヘは、被相続人から財産を取得した者が特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例を受けていないことを要件にしています。No.4124の注3も、特定事業用宅地等の特例を使う人がいれば、取得者全員がこの納税猶予を受けられないとしています。

どちらが有利かは、医院の土地・建物・医療機器の評価額のバランスと、後継者が生涯診療を続けるかで変わります。No.4153の比較表では、納税猶予は事業の継続が「終身」、小規模宅地等の特例は「申告期限まで」とされています。猶予が打ち切られれば、猶予税額に利子税を加えて納めることになります。

持分ありの医療法人: 出資持分の評価と認定医療法人

親の医院が経過措置医療法人(持分あり)なら、相続財産の中心は親の出資持分です。法人に内部留保が積み上がっているほど、持分の評価額は出資した金額を大きく上回ります。持分は換金しにくい財産なので、相続人は「現金のない相続税」を抱えることになりやすい構造です。

この負担への手当てとして、持分なし医療法人への移行を前提にした2つの特例があります。どちらも、医療法人が厚生労働大臣の認定を受けた「認定医療法人」であることが前提です。

1つ目は納税猶予です(No.4150、措置法第70条の7の12)。相続税の申告期限において認定医療法人であれば、持分に対応する相続税は認定移行計画に記載された移行期限まで猶予されます。期限までに持分のすべてを放棄した場合などには、届出により猶予税額の全部または一部が免除されます。

2つ目は税額控除です(No.4177、措置法第70条の7の13)。相続開始の時に認定医療法人であり(申告期限か2029年12月31日のいずれか早い日までに認定を受けた法人を含む)、相続人が申告期限までに持分の全部または一部を放棄したときは、放棄相当の相続税額が控除されます。申告期限までに払戻しを受けた場合などは、この特例を使えません。

認定を受けられる期間は、2014年10月1日から2029年12月31日までです(No.4150・No.4177の注2)。期限まで3年余りあるように見えますが、移行計画の作成と認定には時間がかかります。相続が起きてから慌てて動くと、申告期限に認定が間に合わない場合があります。

持分を放棄すれば相続税の負担は軽くなりますが、その代わりに出資持分という財産は手元から消えます。将来、法人を第三者に譲る、解散して残余財産を受け取るといった選択肢は狭まります。継ぐ予定の子と継がない兄弟姉妹の間で、この点の受け止め方が分かれることが多いはずです。

法人が親の土地を借りている場合、その土地は特定同族会社事業用宅地等(400㎡・80%減)に当たる可能性があります。要件は、被相続人とその親族等が法人の出資の総額の50%超を持っていること、取得した親族が申告期限に法人の役員であること、申告期限まで土地を保有することです(No.4124)。継がない子がこの土地を取得しても、役員でなければ80%減は使えません。

持分なしの医療法人: 相続の焦点は「法人の外」に移る

親の法人が持分なしなら、法人の財産を誰かが相続するという構図は生まれません。持分の定めがない以上、相続税の課税対象になる出資持分がないからです。

その代わり、焦点は法人の外にある親個人の財産に移ります。代表的なのは、親が法人に貸している診療所の土地と建物です。賃料を受け取っていれば、貸付事業用宅地等(200㎡・50%減)の候補になります。前述の特定同族会社事業用宅地等は「出資の総額」の50%超が要件なので、出資のない法人に貸している土地がこれに当たるかは、税理士に個別の確認を求めてください。

もう一つは、理事長だった親の死亡に伴う役員退職金や弔慰金です。これらは法人の規程と決議で金額が決まり、遺族の受け取り方によって相続税の扱いが変わります。規程が整っていない法人では、相続後に理事会で揉める原因にもなります。

持分なし法人では、法人の経営権は理事・社員の構成で決まります。子が継ぐなら、親の存命中に社員・理事として加わっておくことが、相続後の承継を滑らかにします。医療法人の基本的な仕組みは 医師の法人化のメリット で整理しています。

ルート1「継ぐ」: 10か月の中で税と手続きを並走させる

子が親の医院を継ぐ場合、個人開設なら開設者が変わることになります。医療法上、個人の診療所の開設者は親から子へ「移る」のではなく、親の診療所の廃止と子の新規開設という形になります。

医療法第9条第2項は、診療所の開設者が死亡したとき、戸籍法上の死亡の届出義務者が10日以内にその旨を所在地の都道府県知事に届け出ることを義務付けています。子が臨床研修等修了医師として新たに開設する場合は、同法第8条により開設後10日以内に開設地の都道府県知事へ届け出ます。いずれも「しなければならない」と書かれた義務規定です。

保険診療を途切れさせないために重要なのが、保険医療機関の指定の遡及です。関東信越厚生局の案内(2026年8月3日更新)は、個人開設の開設者が死亡・病気等により、血族その他勤務する保険医等が引き続き開設者となって患者の診療を継続する場合を、遡及指定が認められる類型の1つとしています。所在地を変えずに、個人の開設者から血族その他勤務する保険医等の個人へ変更する場合や、個人から当該個人を代表とする法人へ変更する場合も同様です。

遡及が認められれば、新しい開設者の指定日を前の開設者の廃止日に合わせることができ、空白期間の保険請求を守れます。取扱いは各厚生局で細部が異なるため、所轄の厚生局(都府県事務所)に早い段階で相談してください。

図3: 継ぐ場合の手続きと税の時系列(医療法第8条・第9条、国税庁No.4102・No.4124、関東信越厚生局の案内をもとに作成)

時系列にすると、死亡から10日以内に保健所への死亡の届出、子の新規開設と開設届、厚生局への指定申請(遡及の相談)が先行します。並行して遺産分割協議を進め、10か月以内の申告期限までに、事業承継・保有継続の要件を満たしたうえで特例を選んで申告する流れです。

勤務医の子にとっての現実的な壁は、勤務先の退職と開設の時期をこの10か月に収められるかです。勤務先の就業規則上の退職予告期間、医局人事、診療科の違いによる患者の継続性など、税以外の要素が期限を決めます。独立の時期の考え方は 医師の独立のタイミング にまとめています。

ルート2「継がない」: 閉院・売却では特例の前提が変わる

子が誰も継がない場合、個人開設の医院は閉院か第三者への承継になります。どちらの場合も、診療所の土地に特定事業用宅地等の80%減を使う道は、原則として閉ざされます。事業承継要件を満たす親族がいないからです。

閉院する場合、医療法第9条第1項により、開設者が廃止したときは10日以内に都道府県知事に届け出る義務があります。開設者が亡くなっていれば、同条第2項の死亡の届出がこれに当たります。カルテの保存、職員の雇用の整理、リース契約の解約など、閉院の実務は税以外にも多くあります。閉院が増えている背景は 開業医の廃業理由 で扱っています。

閉院後の土地は、自宅と同じ敷地なら特定居住用宅地等(330㎡・80%減)の候補になりえます。ただし同居や生計一でない子が取得する場合は、いわゆる「家なき子」の要件(相続開始前3年以内に自己・配偶者・三親等内の親族などが所有する家屋に住んだことがないことなど6項目)を満たす必要があります(No.4124)。勤務医で持ち家がある子は、多くの場合この要件から外れます。

第三者に医院を譲る場合は、事業譲渡の対価が親の所得になる、または売却代金が相続財産に加わるといった、M&A固有の論点が出てきます。こちらは クリニックの第三者承継(M&A) で詳しく扱っているので、本記事では深入りしません。

図4: 継ぐ場合と継がない場合の比較(国税庁No.4124・No.4153、医療法第8条・第9条をもとに作成)

計算例: 80%減が使えるかで相続税の総額はどう変わるか

特定事業用宅地等の80%減が、どれほど税額に効くのかを計算してみます。以下は仮定に基づく試算で、実在のケースではありません。

前提は次のとおりです。被相続人は個人開設の開業医。法定相続人は配偶者と子2人の3人で、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円。正味の遺産額は3億円で、そのうち診療所の敷地(400㎡以内)の評価額が1億円とします。その他の財産、債務、葬式費用、生前贈与は計算に含めず、遺産総額3億円がそのまま課税価格の合計額になるものとします。

継がない場合、敷地は1億円のまま課税価格に入ります。課税遺産総額は3億円-4,800万円=2億5,200万円です。法定相続分で分けると、配偶者が1億2,600万円、子が各6,300万円。速算表(No.4155)を当てはめると、配偶者分は1億2,600万円×40%-1,700万円=3,340万円、子分は各6,300万円×30%-700万円=1,190万円で、相続税の総額は5,720万円です。

子の1人が申告期限までに継いで特例を使う場合、敷地の評価額は1億円×(1-0.8)=2,000万円になり、課税価格の合計は2億2,000万円です。課税遺産総額は1億7,200万円。配偶者分は8,600万円×30%-700万円=1,880万円、子分は各4,300万円×20%-200万円=660万円で、相続税の総額は3,200万円になります。

図5: 計算例における相続税の総額の比較(筆者の試算。前提は本文のとおり、国税庁No.4152・No.4155の計算方法と速算表による)

差は2,520万円です。これは相続税の「総額」の比較で、実際の各人の納付額は、誰が何を取得するかによる按分と、配偶者の税額軽減(No.4158)の適用で変わります。特例を受けた土地を取得した子の課税価格が下がる分、その子の負担が大きく軽くなる構造です。

この試算から言えるのは、医院の土地の評価額が大きいほど、「10か月以内に継ぐかどうか」の判断が数千万円単位の差になりうるということです。逆に、敷地が狭い、評価額が低い、自宅と兼用で特定居住用を使えるといった事情があれば、継ぐかどうかを税の差だけで決める理由は弱くなります。

親が元気なうちに家族で確認しておく6項目

相続が起きてからの10か月は、思っている以上に短い期間です。特例の要件の多くは「申告期限まで」に満たす必要があり、事前の準備でしか対応できないものが含まれます。

図6: 親が元気なうちに確認しておく6項目(本記事の内容を整理したチェックリスト・概念図)

1つ目は開設形態の確認です。個人開設か医療法人か、医療法人なら定款上の持分の定めの有無を、書類で確かめます。2つ目は医院の土地・建物の名義と、法人への賃貸の有無です。3つ目は、継ぐ意思のある子がいるか、いるならいつ勤務先を離れられるかです。

4つ目は、持分ありの医療法人なら、認定医療法人への移行を検討するかどうかです。認定の期限は2029年12月31日です。5つ目は、個人開設で個人版事業承継税制を使う可能性があるなら、2028年9月30日までに個人事業承継計画を出す必要があるかどうかです。6つ目は、遺言や遺産分割の方針です。特例の適用には、対象となる土地の取得者の同意と申告期限までの分割が原則として必要だからです。

これらは家族の間でも話しにくい事柄ですが、診療を続けている親自身が、地域の患者や職員のために一番気にかけていることでもあります。「税金の話」としてではなく、「医院をどうするか」の話として切り出すほうが、親も答えやすいはずです。

まとめ: 継ぐかどうかの判断期限は「10か月」と覚えておく

親の医院の相続は、まず開設者が個人か医療法人か、医療法人なら持分の有無で論点が分かれます。個人開設では、診療所の土地に特定事業用宅地等の80%減を使えるかが中心で、そのためには申告期限までに事業を引き継ぎ、営み続けることが条件です。個人版事業承継税制とはどちらか一方しか選べません。持分ありの医療法人では、認定医療法人による納税猶予・税額控除が、2029年12月31日の認定期限とともに論点になります。

継ぐ場合は、医療法上の廃止・開設の届出(10日以内)と保険医療機関の遡及指定を、10か月の申告期限と並走させることになります。継がない場合は80%減の前提が崩れるため、居住用の特例や第三者承継を含めて組み直します。

本記事は制度の整理であり、個別の税務判断ではありません。実際の評価額や特例の選択は、相続税に詳しい税理士と、所轄の保健所・厚生局に必ず確認してください。

参考資料

  • 国税庁 タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」、No.4155「相続税の税率」、No.4102「相続税がかかる場合」、No.4158「配偶者の税額の軽減」
  • 国税庁 タックスアンサー No.4153「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除(個人版事業承継税制)」
  • 国税庁 タックスアンサー No.4150「医療法人の持分についての相続税の納税猶予の特例」、No.4177「医療法人の持分についての相続税の税額控除の特例」
  • 租税特別措置法第70条の6の10(e-Gov法令検索)
  • 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第2条(e-Gov法令検索)
  • 国税庁「法令解釈通達のあらまし(情報)令和元年度改正関係(個人版事業承継税制抜粋)」(70の6の8―20の説明、PDF p.35)
  • 医療法第8条・第9条・第44条(e-Gov法令検索)
  • 関東信越厚生局「保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて」(2026年8月3日更新)