「継承の打診が来ているが、親族内承継と第三者承継で何が変わるのか整理できていない」「相手の医療法人に出資持分があると聞いたが、承継にどう影響するのか分からない」。開業医の高齢化が進むなかで、新規開業ではなく既存クリニックを引き継ぐ選択肢に直面する医師は増えています。本記事では、承継の類型、医療法人の出資持分の扱い、保健所・厚生局への届出手続き、患者への継続性確保、譲渡対価の考え方という取引プロセスを、医療法・医師法などの一次資料にもとづいて順に追跡します。

結論: 承継は「誰に」「どの器で」渡すかで手続きも対価の考え方も変わる

クリニックの継承は、①誰に引き継ぐか(親族内承継・第三者承継=M&A・業務提携)、②どのような法的な器で運営されているか(個人開業か、医療法人か、医療法人なら出資持分ありかなしか)という2つの軸の組み合わせで、必要な手続きも対価の考え方も、患者への影響もまったく異なります。

継承は「ゼロから始める」新規開業と違い、「進行中の診療を止めずに引き継ぐ」取引です。患者は診療が途切れることを想定しておらず、保険診療の空白期間や診療録の散逸は、経営上の問題である以前に医療提供上の問題になります。開業資金の内訳や開業失敗の要因を扱った記事は、いずれも立地や資金計画をゼロから組み立てる新規開業を前提にしていますが、既存の患者基盤・スタッフ・設備をすでに持つ承継では、検討すべき論点の重心そのものが変わります。この記事では、実際の取引が進む順序―類型の選択、出資持分の整理、行政手続き、患者への継続性確保、対価の算定―に沿って一次資料にもとづき整理します。

図1: クリニック継承が進む全体プロセス、類型選択から対価算定まで

承継の類型―親族内承継・第三者承継(M&A)・業務提携

クリニックの承継は、誰が後継者になるかで大きく親族内承継・第三者承継(M&A)・業務提携の3つに分かれます。

親族内承継は、子や配偶者など親族の医師が引き継ぐ形です。患者や地域からの信頼を引き継ぎやすい一方、後継者となる親族が医師であり、かつ承継の意思を持っている必要があります。厚生労働省の令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、診療所に従事する医師の平均年齢は60.1歳で、病院(医育機関附属の病院を除く)の47.9歳を大きく上回っています(厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」)。開業医の高齢化が進む一方、子が医師にならない、あるいは別の診療科・地域を選ぶケースは珍しくなく、親族内承継だけに絞ると後継者不在のまま廃業に至るリスクが残ります。

第三者承継(M&A)は、親族以外の医師や医療法人・事業会社に譲渡する形です。個人開業であれば資産・患者情報・スタッフを譲渡する事業譲渡、医療法人であれば出資持分の譲渡や法人の合併という手法をとります。候補者の選択肢は広がりますが、譲受側との診療方針のすり合わせや、新規開業にはない対価の交渉プロセスが必要になります。相手探しを民間の医業承継仲介事業者に依頼する方法のほか、中小企業庁所管の中小企業基盤整備機構が全国47都道府県に設置している「事業承継・引継ぎ支援センター」でも、医療機関を含む後継者不在の事業者と譲受希望者のマッチング支援を無料で受けられます(中小企業庁「M&A、事業承継に関するご相談」)。

医療法人同士が合併する形の第三者承継では、事業譲渡とは別の手続きが必要です。吸収合併・新設合併とも、存続または新設する医療法人の主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けなければ効力が生じず、知事はあらかじめ都道府県医療審議会の意見を聴いたうえで認可の可否を判断します。認可の通知があった日から2週間以内には、債権者保護のための財産目録・貸借対照表の作成も必要になります(東京都保健医療局「医療法人の合併手続」)。事業譲渡が個々の資産・契約を選んで引き継ぐのに対し、合併は法人の権利義務を包括的に引き継ぐ点で手続きの性質が異なります。

業務提携は、経営権は移転させず、診療の一部を委託する、複数の診療所が非常勤医師を融通し合うといった形です。完全な承継の前段階として業務提携で連携関係を築き、相性を見極めたうえで承継に移行する進め方も実務上の選択肢です。開設者はそのままで、診療体制の一部だけを他の医師と組む点で、開設者そのものが入れ替わる親族内承継・第三者承継とは行政手続きの性質が異なります。開設者を変更しない業務提携であれば、保健所への開設者変更届は不要な一方、非常勤医師の増員や診療時間の変更を伴う場合は、通常の変更届の対象になります。

3類型を分ける軸は、開設者そのものが入れ替わるかどうかです。親族内承継・第三者承継は開設者が入れ替わるため、この後に述べる保健所・厚生局への手続きが一式必要になります。業務提携は開設者を維持したまま連携の範囲を広げる関係であり、いずれ承継に発展する可能性はあっても、それ自体は承継の手続きを要しません。自院がどちらを目指しているのかを早期に切り分けておくことが、以降の実務を無駄なく進める前提になります。

図2: 承継の3類型は「誰に」「どこまで」引き継ぐかで整理できる

医療法人の出資持分の扱いが承継の意味を変える

個人開業の診療所では、資産や患者情報が院長個人に帰属しているため、譲渡の対象は比較的明確です。これに対し医療法人が運営する診療所では、法人そのものをどう扱うかで承継の意味が変わり、その分岐点が出資持分の有無です。

出資持分とは、平成26(2014)年の医療法改正により「定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻し又は残余財産の分配を受ける権利」と定義される権利です(厚生労働省医政局医療経営支援課「『持分なし医療法人』への移行に関する手引書」令和8年3月改訂)。定款に持分に関する規定を置く法人を持分あり医療法人、置かず持分が現に存在しない法人を持分なし医療法人と呼びます。相手方が医療法人であれば、交渉の初期段階で定款・出資者名簿・直近の貸借対照表を確認し、持分の有無と出資者の構成をまず把握しておくことが、その後の対価交渉や行政手続きの前提になります。

平成18(2006)年の医療法改正で非営利性の徹底を目的に持分あり医療法人の新規設立は認められなくなり、既存の持分あり医療法人は当分の間存続が認められる「経過措置医療法人」という位置づけです(同手引書)。改正から約20年、実態としても持分なし法人への移行が進んでいます。厚生労働省の調べによると、令和8(2026)年3月31日現在、社団医療法人59,514法人のうち出資持分ありは35,104法人(58.9%)、持分なしは24,410法人(41.0%)です(厚生労働省「医療法人数の推移」令和8年3月31日現在)。持分ありが依然として過半数ですが、平成30年時点の73.6%(53,575法人中39,716法人)からは着実に構成比が下がっています。

承継で問題になりやすいのは、持分あり法人を引き継ぐ際、あるいは出資者が退社・死亡する際に生じる払戻請求と課税です。同手引書によると、出資者は退社時に持分の払戻を法人に請求でき、死亡すれば相続人に相続税が課税され、その納税資金を確保するため法人へ払戻を請求する事態も想定されます。逆に出資者が持分を放棄すると残る出資者に贈与税が、全員が放棄すれば法人に贈与税(みなし贈与課税)が生じ得ます。医療法人は剰余金の配当を禁止されているため利益が内部に留保されやすく、設立から年月が経つほど持分の評価額が出資額を大きく上回るケースがあり、この評価額が承継時の負担として顕在化します。

持分なし法人であれば、こうした払戻請求や相続・贈与課税のリスクを制度上抱えていないため、承継そのものは出資持分の整理を経ずに進められます。対象法人が持分あり・持分なしのいずれか、持分ありであれば評価額がどの程度かを、契約交渉の前に確認しておく必要があります。

持分あり法人を承継する前提で、負担の大きい相続税・贈与税をあらかじめ抑えておきたい場合は、厚生労働大臣の認定を受けて「認定医療法人」となり、持分なし法人へ計画的に移行するという選択肢もあります。認定を受けると、出資者に相続が発生した際の相続税や、持分放棄にともなう他の出資者・法人への贈与税について、移行計画の期間満了まで納税が猶予され、期間内に持分をすべて放棄すれば猶予税額は免除されます(同手引書)。この移行計画認定制度の実施期間(厚生労働大臣の認定を受けられる期限)は令和11(2029)年12月31日までと定められており、令和7年度実績では申請から認定通知までの平均的な期間は約3か月とされています(同手引書)。承継を機に法人の器そのものを整理するかどうかも、検討の選択肢に入ります。

出資者の相続が実際に発生してから移行や払戻の是非を考え始めると、選べる選択肢は狭くなります。手引書も、移行の検討には十分な準備期間を確保することを前提としたステップ(検討体制の整備、出資者の特定と評価、出資者への事前説明という順序)を示しており(同手引書)、承継の話が具体化する前の段階から、出資者間で持分をどう扱うかを話し合っておくことが、後継者が決まってからの交渉を単純にします。

図3: 社団医療法人の6割は依然として出資持分ありだが、持分なしへの移行が進む

保健所・厚生局への開設者変更届出手続き

承継の合意ができても、それだけで診療を続けられるわけではありません。医療法・健康保険法にもとづく複数の行政手続きを、診療を止めないタイミングで通す必要があります。

診療所の開設に関する手続きは、開設者が誰かで根拠条文が変わります。医師・歯科医師が自ら開設する場合は医療法第8条にもとづく届出制で、開設後10日以内に保健所へ届け出ます。医師・歯科医師以外の者(医療法人を含む)が開設する場合は、医療法第7条にもとづく許可制です。

承継で注意が必要なのは、「開設者の変更」は住所や管理者氏名の変更のような通常の変更届では対応できない点です。東京都多摩府中保健所の案内によると、開設者そのものが変わる場合(相続による承継など)は、既存診療所の廃止手続きと新規開設の許可(届出)手続きという2段階が必要です(東京都多摩府中保健所「診療所・歯科診療所の開設許可(届出)事項の変更」)。廃止の届出は医療法第9条にもとづき、廃止後10日以内に保健所へ届け出ます。

個人開業医から医療法人への切り替えを伴う承継であれば、手続きはさらに一段階増えます。まず都道府県知事による医療法人設立の認可(医療法第44条)を受け、設立の登記(医療法第46条)を経て法人格を取得したうえで、法人としての診療所開設許可(医療法第7条)を保健所から受けます。そのうえで個人診療所の廃止届と、法人診療所の開設届をあわせて保健所へ提出する流れです。行政手続きだけでも複数の窓口をまたぐため、承継の実行日から逆算して、どの手続きにどれだけの期間を見込むかをあらかじめ整理しておく必要があります。

行政への届出と並行して、契約関係の名義変更も発生します。診療所が賃貸物件であれば、賃貸借契約の借主を旧開設者から新開設者に切り替えるための貸主の承諾が必要になり、所有物件であれば所有権移転登記が必要です。医療機器がリース契約の場合も、リース会社の承諾を得て契約者名義を変更するか、契約を結び直す必要があります。これらは医療法上の届出とは別の、民事上の契約実務であり、保健所・厚生局への届出の前提として、承継契約を締結する段階で洗い出しておくべき項目です。

図4: 開設者が変わる承継では「変更届」ではなく「廃止+新規開設」の手続きになる

保険診療を継続するには、地方厚生局への手続きも別途必要です。保険医療機関の指定は通常、希望月の前月20日頃までに申請しますが、承継のように開設者の変更と同時に患者が引き続き診療を受けている場合は、指定の効力を承継日にさかのぼらせる遡及指定が認められることがあります(四国厚生支局「保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出」)。遡及指定の要件は、開設者が個人から法人へ、あるいは法人から個人へ変わる場合であっても、旧開設者の廃止と新開設者の開設が連続しており、その間に患者が途切れず診療を受けていることが前提になります。旧開設者側は保険医療機関の指定の廃止手続きを、新開設者側は指定申請と遡及適用の申出をそれぞれ地方厚生局に提出する必要があり、遡及指定が認められないと、新規指定が下りるまでの数週間、保険診療を提供できない空白期間が生じかねません。保健所への開設手続きと並行して、地方厚生局への相談を早い段階から始めておく必要があります。

図5: 承継の届出は複数の期限が並走する、保健所と厚生局を同時に動かす

患者への継続性確保―カルテ・診療録の引き継ぎ義務

承継における行政手続きの目的は、最終的には患者の診療を途切れさせないことにあります。その核心が診療録(カルテ)の引き継ぎです。院名や外観が変わる承継であっても、患者にとっての関心事は「これまでの通院歴や検査結果が、次の医師にも正しく伝わるか」に集約されます。

医師法第24条は、医師が診療をしたときは遅滞なく事項を診療録に記載しなければならないと定め、同条第2項で、勤務医の診療録はその病院・診療所の管理者が、それ以外の診療録は医師自身が、5年間保存しなければならないと規定しています(医師法第24条)。この保存義務は診療所を廃止しても消えず、承継によって開設者が変わっても、最終記載日から5年間という期間は引き継がれます。個人開業医が死亡して相続が発生した場合も同様で、保存義務そのものは消滅せず、実務上は相続人や承継した医師が保存場所を確保する対応が必要になります。第三者承継で新開設者が旧診療所と別の場所に移転する場合は、カルテの保管場所をどう確保するかを、承継契約の中であらかじめ取り決めておく必要があります。

診療録には患者の氏名・病歴といった個人データが含まれるため、旧院長から新院長への引き継ぎが個人情報保護法上の第三者提供にあたるのではと懸念されることがあります。この点、個人情報保護法第27条第5項第2号は「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」を第三者提供の制限の対象外と定めており、事業承継にともなうカルテの引き継ぎ自体は本人の同意なしでも違法にはなりません(個人情報保護法第27条第5項第2号)。ただし後継の医師が利用目的を承継前の範囲に限定する義務までは免除されておらず、旧院長が取得した際の目的を超えて情報を利用することはできない点は、承継後も意識する必要があります。

実務上は、法律が定める最低限の要件だけでは患者の不安をぬぐえません。承継の時期と方法をどう伝えるか、旧院長と新院長が一定期間並走する引き継ぎ期間を設けるかは、法的義務ではなく経営判断の領域です。電子カルテのデータを新システムへ移行できるか、ベンダーの解約・切り替え条件がどうなっているかを契約交渉の初期段階で確認しておくと、承継直前に「データが取り出せない」という事態を避けられます。

看護師・医療事務などスタッフの雇用契約も、診療録と並んで継続性を左右する要素です。個人開業の事業譲渡では、雇用契約は自動的には引き継がれず、新開設者との間で契約を結び直す必要があります。医療法人の合併であれば労働契約は包括的に承継されますが、事業譲渡の形をとる場合は、譲渡契約の中で誰との契約をどう引き継ぐかを個別に取り決める必要があります。カルテという情報の継続性だけでなく、それを扱うスタッフの継続性も、承継の交渉段階で並行して詰めておくべき論点です。

譲渡対価の考え方―のれん代の評価要素

承継における対価は、開業資金の相場とは異なり、政府統計として公表された実勢価格は存在しません。取引ごとに規模・地域・診療科・患者数が大きく異なるため、この記事でも特定の金額水準は示しません。ここでは、実務でどのような要素が対価を構成するかという考え方を整理します。

個人開業の診療所を継承する場合、医業承継を専門とする仲介事業者の解説によれば、譲渡対価は時価純資産(資産を時価評価した額から負債を差し引いたもの)に営業権(いわゆるのれん代)を加算する形で算定されることが一般的とされています。営業権の算定方法に統一基準はなく、直近の医業利益の一定期間分を目安とする方法など、仲介事業者ごとに手法が異なります(医業承継仲介事業者の解説による。公的な統計調査にもとづくものではありません)。

一方、医療法人が保有する診療所を承継する場合は、営業権の加算が認められにくい構造があります。医療法人は剰余金の配当を禁止されており(医療法第54条)、非営利性を前提とする法人であるため、超過収益力を対価に反映させる営業権という考え方そのものが、個人開業のようには成立しにくいという見方が実務では一般的です。医療法人の事業譲渡では、譲渡日前日時点の対象資産の帳簿価額(簿価)が取引価格の基準になるとされる場合があり、個人開業の承継とは交渉の前提が異なります。

出資持分ありの医療法人を、持分の譲渡という形で承継する場合は、対価の考え方がさらに変わります。この場合の対価は事業そのものというより、法人に対する持分という財産権の評価額が基準になり、その評価は前段で触れた持分評価額(内部留保を反映して出資額を大きく上回り得る)と直接結びつきます。承継の方式(事業譲渡か、持分譲渡か、合併か)によって対価の組み立て方そのものが変わる点を、交渉の初期段階で認識しておく必要があります。

対価の算定に加えて、税務上の扱いも承継の形態によって異なります。個人開業の事業譲渡であれば譲渡側に譲渡所得課税が生じ、出資持分の譲渡であれば持分の譲渡益に対する課税という形になり、どちらに該当するかで手取り額の設計が変わります。この分野は個別の事情による差が大きく、一般論だけで判断すると誤るため、対価の水準や税務上の扱いを詰める段階では、顧問税理士に加えて医業承継に詳しい専門家を交渉の初期段階から関与させることが実務上の前提になります。

対価の数字だけを先に見せられて判断すると、その前提になっている資産や収益の実態を検証しないまま契約に進んでしまうことがあります。譲受側であれば、決算書・診療報酬の請求データ・設備の維持状況・スタッフの雇用条件などを承継契約の締結前に確認するデューデリジェンスの工程を、規模の大小にかかわらず省略しないことが望まれます。譲渡側であっても、開示する情報の範囲と時期を早い段階で整理しておくと、交渉が長引くことによる診療への支障を抑えられます。

図6: 開業形態によって、対価を組み立てる要素そのものが変わる

まとめ: 土台となる手続きは共通、対価の考え方は形態ごとに分かれる

クリニックの継承は、誰に引き継ぐかという類型の選択と、出資持分の有無という法人形態の2つの軸によって、必要な手続きも対価の考え方も変わる取引です。親族内承継・第三者承継・業務提携のいずれを選ぶにせよ、保健所への開設者変更、地方厚生局への保険医療機関指定、医師法にもとづく診療録の保存義務という土台は共通しており、これを後回しにすると患者の診療を途切れさせるリスクに直結します。対価の算定は公表された相場が存在しない領域だからこそ、時価純資産・営業権・出資持分の評価額のどれが自分のケースに当てはまるかを、早い段階で顧問税理士や仲介事業者とすり合わせておくことが、取引を円滑に進める土台になります。

検討の初動としては、相手方が個人開業か医療法人か、医療法人であれば持分あり・持分なしのどちらかを確認するところから始めると、その後に必要な行政手続きと対価の考え方の見通しが立てやすくなります。行政手続きの窓口(保健所・地方厚生局)と、対価・税務の専門家(税理士・仲介事業者)の両方に、契約書を固める前の段階から相談しておくことが、承継後の診療の空白を避ける実務上の要点です。

承継は、譲る側にとっても受ける側にとっても、一度きりの取引になることがほとんどです。行政手続きの期限や対価算定の枠組みという「型」を先に理解しておけば、個別の交渉では、地域医療をどう続けるか、患者との関係をどう引き継ぐかという、型に収まらない論点に時間を割けるようになります。話が具体化する前の段階から、自分の状況ではどこがすでに整理できていて、どこがまだ一次情報にあたっていない仮定のままかを確認しておくことが、交渉が始まってからの手戻りを減らします。

新規開業を検討している場合は、医師の開業資金はいくらか、内訳から読み解く医師の開業失敗、6つの原因を構造で分解するもあわせて確認すると、継承と新規開業の違いがより明確になります。