育休を取ったら、当直代や外勤収入はどうなるのか。給与明細のどの部分が計算のベースになるのか。育休を検討し始めた勤務医が最初につまずくのは、この「収入の見通しが立たない」という点です。本記事では、産休・育休中に受け取れる手当の仕組みと、勤務医特有の給与体系が収入にどう影響するかを、一次資料に基づいて整理します。
医師の育休中の収入はどうなるか、結論から
産休期間は健康保険の「出産手当金」、育休期間は雇用保険の「育児休業給付金」が収入を支えます。出産手当金は標準報酬日額の2/3、育児休業給付金は休業開始から180日目までが賃金の67%、181日目以降は50%です。2025年4月に新設された出生後休業支援給付金を併用すると、最大28日間は実質80%相当まで引き上げられます(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」)。ただし給付額には上限があり、2026年8月1日以降は給付率67%の期間で月33万2,454円が上限です(厚生労働省 育児休業等給付リーフレット 2026年8月1日改訂版)。加えて、産休・育休期間中は健康保険・厚生年金の保険料が労使とも免除されるため、額面の減少幅よりも手取りの減少幅は小さくなります(日本年金機構)。
ただし勤務医には2つの落とし穴があります。ひとつは、基本給を低く抑えて医師手当を厚くする給与体系だと、給付金の算定基礎額(給付基礎額)が想定より低くなること。もうひとつは、外勤・当直のアルバイト収入は常勤先の給付基礎額に含まれないことです。この2点を知らずに育休に入ると、「思っていたより手取りが減った」という事態になりかねません。以下、順に解説します。
産休と育休は別の制度、まず全体像を押さえる
「育休」とひとくくりに語られがちですが、法律上は産前休業・産後休業・育児休業という3つの制度が連続しているだけで、根拠法も給付元も異なります。産前休業は出産予定日以前42日(多胎妊娠は98日)から任意で取得でき、産後休業は出産翌日から56日間、労働基準法上は就業自体が原則禁止されます。育児休業は原則として子が1歳になるまで(保育所に入所できないなどの事情があれば1歳6か月、さらに2歳まで再延長可能)で、育児・介護休業法にもとづく制度です(厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし)。
産休中は健康保険からの出産手当金、育休中は雇用保険からの育児休業給付金と、財源も申請窓口も切り替わります。復職時に給与額が変わった場合は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出し、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額を実態に合わせる必要があります(日本年金機構)。この届出を忘れると、復職後もフルタイム勤務前提の高い保険料が続くことになるため、時短勤務で復帰する場合は特に確認が必要です。
出産手当金はいくらもらえるか
出産手当金は、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均した額を30日で割り、その2/3を1日あたりの支給額とする計算式です。産前42日・産後56日の合計98日を取得した場合、同協会が示す計算式(支給開始日以前12か月の標準報酬月額平均÷30日×2/3)に当てはめると、標準報酬月額20万円のケースでは1日あたり4,445円、98日間の総支給額は43万5,610円となります(編集部試算、計算式は全国健康保険協会)。標準報酬月額が高い勤務医であれば、この金額は比例して大きくなります。
出産手当金は健康保険(協会けんぽ・各健康保険組合)から支給されるため、勤務先が変わっても加入する保険者が同じであれば手続きの窓口は共通です。産休中は基本的に就業が想定されていないため、当直・外勤を含めて労働することはできません。
育児休業給付金の給付率と上限額
育休に入ると、財源は健康保険から雇用保険に切り替わります。育児休業給付金は「休業開始時賃金日額×支給日数×給付率」で計算され、給付率は休業開始から180日目までが67%、181日目以降は50%に下がります(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」)。休業開始時賃金日額は、育休開始前6か月間の賃金総額を180で割って算出するため、直前の当直手当や賞与の扱いによって数字が変動します。
給付額には上限があり、毎年8月1日に改定されます。2026年(令和8年)8月1日以降(令和9年7月31日までの額)は、休業開始時賃金日額の上限が16,540円、支給日数30日あたりの支給上限額は給付率67%の区分で332,454円、給付率50%の区分で248,100円です(厚生労働省 育児休業等給付リーフレット 2026年8月1日改訂版)。前年(令和7年8月1日改定)の323,811円・241,650円から引き上げられました。年収の高い勤務医ほど、実際の給付率は上限額によって頭打ちになりやすい点に注意が必要です。たとえば休業開始時賃金日額が上限の16,540円を超える場合、給付率67%であっても受け取れる金額は上限額で固定されます。
さらに2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が新設され、夫婦とも育児休業給付の対象となる休業を通算14日以上取得することなどを要件に、育児休業給付金へ給付率13%相当が上乗せされます。合わせると休業開始時賃金の80%(社会保険料免除と非課税により手取り10割相当とされる)が、最大28日間支給される設計です。対象期間は原則として子の出生後8週間以内で、産後休業をした母親は出生後16週間以内です。配偶者が雇用保険の被保険者でない場合など、配偶者の育休取得を要件としない例外もあります(厚生労働省 育児休業等給付リーフレット 2026年8月1日改訂版)。
平均的な年収水準にある勤務医の場合、この上限額はどう働くのでしょうか。令和7年賃金構造基本統計調査によると、常勤医師の平均年収は1,512万2,500円(男性1,594万1,600円、女性1,274万5,300円)です(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況)。この水準の常勤給与であれば、育休開始前の賃金日額が上限の16,540円(30日換算で49万6,200円)を超えることは珍しくありません。つまり、平均的な年収の勤務医の多くは、給付率67%が適用される期間であっても、実際に受け取れる金額は上限額の月332,454円で頭打ちになる可能性が高いということです。「給付率67%」という数字だけを見て収入を見積もると、実際の受給額を過大に見積もってしまう点には注意が必要です。年収別に月ごとの受給額を追った試算や、出産手当金の上限、医師国保の扱いは医師の産休・育休の手当はいくら?上限で決まる月別受給額で詳しく扱っています。本記事では、その手前にある「給与明細のどこが基礎額になるか」に焦点を当てます。
産後パパ育休(出生時育児休業)という選択肢
育児休業とは別に、出生後8週間以内に最大28日まで取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」という制度もあります。名称は「パパ」ですが、養子縁組などの場合を除き主に父親が対象で、通常の育児休業とは別枠で、2回に分けて取得することも可能です。給付率は育児休業給付金と同じく67%(休業開始時賃金日額の上限は同じく16,540円で、28日取得時の上限額は310,290円)で、出生時育児休業給付金として支給されます(厚生労働省 育児休業等給付リーフレット 2026年8月1日改訂版)。休業中の就業は28日取得時で最大10日(10日を超える場合は80時間)までです。
2025年4月以降は、本人と配偶者がそれぞれ対象の休業を通算14日以上取得していることなどを条件に、出生後休業支援給付金として給付率13%が上乗せされます(28日取得時の上限額は60,205円)。最大28日間は賃金の80%(手取りでは10割相当とされる)まで補填される設計です。数週間単位のまとまった休みを取りにくい診療科・当直体制の病院でも、産後パパ育休であれば「出生直後の数日〜数週間だけ」という区切り方がしやすく、男性医師にとっては現実的な選択肢の一つになります。申出期限から逆算した当直表の調整や、28日を2回に分ける置き方は男性医師の産後パパ育休: 当直表のなかで28日を切るで具体的に整理しています。
申し出はいつまでにすればよいか
育児休業の申し出は、原則として休業開始予定日の1か月前までに勤務先へ行うことになっています(子が1歳以降の育児休業は2週間前まで)。一方、産後パパ育休は原則2週間前までの申し出でよいとされていますが、勤務先が労使協定を結んでいる場合は申出期限が1か月前まで延長されていることもあります(厚生労働省 育児休業制度特設サイト)。
当直表や外来担当のシフトは数か月先まで組まれていることが多いため、実務上は制度上の期限より早く、遅くとも出産予定日の2〜3か月前には医局長・診療科長に意向を伝え、当直・外来の引き継ぎ調整を始めておくと角が立ちにくくなります。給付金の申請自体はハローワークを通じて勤務先が行う手続きが中心ですが、必要書類(母子健康手帳の写しなど)は本人が準備するものもあるため、早めに人事・給与担当者に確認しておくと安心です。
共働き夫婦での取得戦略
2022年の法改正で育児休業は2回に分けて取得できるようになり、産後パパ育休も別枠で2回まで分割できます(厚生労働省 育児休業制度特設サイト)。この分割取得の仕組みを使うと、共働きの医師夫婦では「出産直後は夫が産後パパ育休を取り、母親の職場復帰のタイミングで夫が2回目の育休を取る」といった交代制の取り方が可能になります。
前述の出生後休業支援給付金は、夫婦とも対象の休業を通算14日以上取得していることなどが要件になっているため、片方だけが長期間休むよりも、夫婦で時期を分けて取得したほうが、世帯として給付率80%相当の恩恵を受けやすくなります。当直・外勤のシフトが集中する時期を避けて休業時期を選べるのも、分割取得ならではのメリットです。勤務先の医局全体の人員配置を踏まえ、上司・同僚とも早めに調整しておくとよいでしょう。復職後にパート勤務へ切り替えて子育て期を乗り切る選択肢もあり、週の勤務日数の設計については医師のパート勤務、子育て期は週の日数から設計する で詳しく取り上げています。
落とし穴①: 基本給と医師手当の内訳で給付基礎額が変わる
勤務医の給与は、基本給に「医師手当」「宿日直手当」「役職手当」などが上乗せされる構成が一般的です。育児休業給付金の算定基礎となる「休業開始時賃金」には、原則として毎月決まって支払われる手当も含まれます。しかし、基本給部分を低く設定して医師手当で総支給額を高くしている病院では、給与体系の設計によって算定に含まれる項目・含まれない項目の線引きが変わり、育休時の給付基礎額が想定より低くなるケースがあると指摘されています(民間医局コネクト「育児休業」アンケート)。
自分の給与明細のどの項目が「毎月決まって支払われる賃金」に該当するかは、育休に入る前に人事・給与担当者に確認しておくと安心です。特に、宿日直手当が月によって変動する病院では、直近6か月の当直回数が給付基礎額に直結します。育休前の数か月だけ当直を減らしていると、その分給付基礎額も下がる点は見落としやすいポイントです。
落とし穴②: 外勤・当直バイト収入は育休給付に反映されない
もう一つ見落とされがちなのが、外勤(アルバイト)収入の扱いです。育児休業給付金は、育休を取得する常勤先の雇用保険にもとづいて計算されるため、外勤先での給与は給付基礎額の計算に反映されません。勤務医の年収は常勤の給与だけでなく外勤・当直収入が一定の割合を占めることが多いため、この点を織り込まずに育休中の収入を見積もると、実際の手取り減少幅とのギャップが生まれやすくなります(民間医局コネクト「育児休業」アンケート)。
外勤先との契約自体も、育休中に継続できるかどうかは病院や契約形態によって異なります。個人の業務委託契約として外勤先と直接契約している場合、その契約は雇用保険の枠外にあるため、育休を理由に自動的に休止されるわけではありません。外勤先の契約更新時期と育休の開始・終了時期が近い場合は、契約を継続するのか、育休期間だけ休止するのかを、常勤先の就業規則や産業医との相談も含めて早めに整理しておく必要があります。
社会保険料はどうなるか
産前産後休業・育児休業の期間中は、健康保険・厚生年金保険の保険料が被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。免除を受けるには勤務先を通じて「育児休業等取得者申出書」などを提出する必要があり、免除期間中も被保険者資格や将来の年金額の計算上は保険料を納めた期間として扱われるため、年金額が減ることはありません(日本年金機構)。
賞与にかかる保険料(賞与保険料)についても免除の対象ですが、賞与を支払った月の末日を含めて連続1か月を超える育休を取得している場合に限られます(日本年金機構)。ボーナス月をまたいで短期間だけ育休を取る場合、賞与保険料の免除条件を満たさないことがあるため、賞与の支給時期と育休の開始・終了日を合わせて確認しておくとよいでしょう。額面の給付額だけでなく、この保険料免除の効果を含めて考えると、育休中の手取りの目減り幅は給付率の数字(67%・50%)よりも小さくなるのが実際のところです。
もう一つ知っておきたいのが、復職後に時短勤務などで給与が下がった場合の年金への影響です。日本年金機構には「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という特例があり、3歳未満の子を養育する期間に標準報酬月額が下がっても、申出書を提出すれば養育開始前の高い標準報酬月額で将来の年金額を計算してもらえます(日本年金機構)。育休明けに時短勤務や当直免除で一時的に収入が下がっても、この特例を申請しておけば、将来受け取る厚生年金の額が目減りする心配はありません。申出は勤務先を通じて行い、さかのぼって申請できる期間にも上限があるため、復職のタイミングで担当部署に確認しておくとよいでしょう。
復職後、当直・残業の負担を軽くする制度もある
「収入がどうなるか」は育休期間だけでなく、復職後の働き方によっても左右されます。育児・介護休業法には、育休とは別に、子が3歳になるまで利用できる短時間勤務制度があり、事業主は原則として1日6時間の所定労働時間を用意する義務があります(厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし)。当直や時間外の対応を前提とした常勤医の給与体系では、短時間勤務中は当直手当・時間外手当が発生しない分、給与が下がるのが一般的です。ただし前述の養育期間標準報酬月額特例を申請しておけば、この間の給与低下が将来の年金額に響くことはありません。
さらに、小学校就学前の子を養育する場合は、請求により時間外労働を一定の範囲(1か月24時間・1年150時間を超える部分)まで制限してもらえる制度や、深夜(午後10時〜午前5時)の勤務を免除してもらえる制度もあります(厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし)。当直免除の希望は、この深夜業制限の請求という形で勤務先に伝えることができます。当直手当がなくなる分、月々の収入は下がりますが、体力的な負担を減らしながら常勤を続けられるという点では、育休を経て早期に外勤・当直を再開するよりも無理のない選択になる場合もあります。どこまで制度を使い、どこから収入を優先するかは、家庭の状況と勤務先の代替要員の確保状況によって変わってくるため、復職前に上司・人事と具体的にすり合わせておくとよいでしょう。2025年4月からは、2歳未満の子を養育するために時短勤務をした場合、時短中に支払われた賃金の10%を上乗せする「育児時短就業給付金」も始まっています(時短中の賃金が開始時賃金月額の90%以下の場合。厚生労働省「Q&A育児休業等給付」)。当直免除の請求根拠となる育介法の条文や運用の実務は、医師の育児両立、当直免除は育介法の第何条か で詳しく解説しています。
育休中に働くとどうなるか
育児休業給付金を受け取りながら一定の就労をすることも制度上は可能ですが、条件があります。ひとつの支給単位期間(原則1か月)中の就業日数が10日以下、10日を超える場合は就業した時間数が80時間以下であることが要件です。これを超えると、その支給単位期間については給付金が支給されません(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」)。
さらに、休業期間中に支払われた賃金が休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上になる場合は、給付額が0円になります。80%未満であっても、支払われた賃金額に応じて給付額は減額されます(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」)。当直や外勤を一部再開しながら育休を取る場合、この「月10日・80時間」と「賃金8割」という2つの上限を超えないよう管理する必要があります。恒常的・定期的に働く場合はそもそも育休とはみなされない点も、勤務先の担当者と事前にすり合わせておくべきポイントです。
医師の育休取得率と、取得をためらう理由
制度としては整っていても、実際に育休を取得している医師の割合には男女で大きな差があります。子どものいる医師824人(男性555人・女性269人)を対象にした調査では、育休取得経験(現在取得中を含む)は女性医師で82.9%(現在育休中14.1%、過去に取得68.8%)である一方、男性医師では16.7%(現在育休中1.6%、過去に取得15.1%)にとどまっています(民間医局コネクト「育児休業」アンケート)。
取得しなかった理由としては、男女共通で「同僚にしわ寄せがいく」が最多(男性67.3%、女性66.5%)で、男性医師では「取得する前例がない」(62.3%)、「上級医の理解が得にくい」(52.5%)が上位に挙がっています(民間医局コネクト「育児休業」アンケート)。別の調査(有子男性医師367人、2024年8月実施)でも、男性医師の育休取得経験は9.9%と、民間企業全体の2023年度男性育休取得率30.1%と比べて低い水準にとどまっており、取得しなかった理由として「収入が減ることに抵抗があった」が42名(11.4%)、「今後のキャリアへの影響を懸念した」が29名(7.9%)挙げられています(エムステージ 男性医師育休アンケート)。
収入への不安は、取得をためらう理由の中で無視できない割合を占めています。しかし前述の通り、給付率・保険料免除・出生後休業支援給付金を組み合わせれば、額面67〜80%・手取りではさらに近い水準まで補填される制度設計になっています。「収入がゼロになる」という誤解のまま取得を諦めているケースがあるとすれば、それは正確な試算をしていないことが原因かもしれません。
育休前に確認しておきたい5つのこと
収入面での想定違いを防ぐために、育休の申請前に確認しておきたい項目を整理しました。
1点目は、基本給と医師手当の内訳です。給与明細を見て、どこまでが「毎月決まって支払われる賃金」として給付基礎額に算入されるかを、給与担当者に確認しておきます。2点目は外勤・当直契約の扱いで、育休中に契約を継続するのか休止するのかを外勤先とも合意しておく必要があります。3点目は賞与の支給月と育休期間の重なりで、賞与保険料の免除条件(1か月超の育休取得)を満たすかどうかを確認します。4点目は育休中に一部就労する場合の上限(月10日・80時間、賃金8割ルール)で、これを超えると給付が止まる点をあらかじめ共有しておきます。5点目は、これらを踏まえた家計全体の試算です。給付額・保険料免除・配偶者の収入を合わせて、復職時期までの手取りベースの見通しを立てておくと、育休中に「想定と違う」と慌てずに済みます。
よくある質問
専攻医・後期研修医でも育休は取れるか
有期雇用契約であっても、雇用保険に加入していれば育児休業給付金の対象になります。以前は「雇用された期間が1年以上」という要件がありましたが、この要件は撤廃され、有期雇用に固有の条件は「子が1歳6か月になるまでに契約満了となることが明らかでないこと」です(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」)。これとは別に、全員共通の要件として、休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数11日以上(または80時間以上)の完全月が12か月以上必要です(厚生労働省 育児休業等給付リーフレット 2026年8月1日改訂版)。専攻医のようにローテーションで所属先が変わる立場でも、契約が更新される見込みがあれば対象になり得るため、勤務先の医局事務や専攻医プログラムの担当者に確認しておくとよいでしょう。
大学院生の医師(社会人大学院)の場合はどうなるか
社会人大学院に在籍しながら常勤先で雇用されている場合、育児休業給付金の対象になるかどうかは、あくまで雇用保険の被保険者かどうかで決まります。大学院の学籍とは別に、常勤先での雇用契約・雇用保険加入状況を基準に考える必要があります。研究費や奨学金など、雇用に基づかない収入は育児休業給付金の計算に含まれないため、収入源が複数ある場合は、どこまでが給付の対象になるのかを整理しておくことが大切です。
まとめ: 制度を知れば、収入の見通しは立てられる
医師の育休中の収入は、出産手当金・育児休業給付金・出生後休業支援給付金・社会保険料免除という複数の制度が組み合わさって決まります。額面の給付率だけを見ると67%や50%という数字に不安を感じるかもしれませんが、保険料免除の効果を含めた実質的な手取り減少幅は、それよりも小さくなるのが一般的です。一方で、基本給と医師手当の内訳、外勤・当直収入の扱い、そして平均的な年収水準では給付額が上限に頭打ちになりやすいという点は、勤務医特有の落とし穴であり、一般的な育休情報では触れられにくい部分です。
復職後も、短時間勤務や当直・深夜業の免除といった制度を組み合わせれば、収入と体力のバランスを取りながら常勤を続ける道はあります。「収入がどうなるか分からないから取得をためらう」のではなく、育休を検討し始めた段階で給与明細と契約書をもとに具体的な試算をしておくことが、収入面の不安を減らす一番の近道になります。
