時間外・休日労働が月100時間以上になりそうな医師への面接指導は、2024年4月から、B・C水準の病院だけでなく、A水準のみの病院や診療所にも課されています。この記事は、病院の事務長・人事担当・産業医の方に向けて、対象者の把握から実施医師の確保、面接、意見聴取、就業上の措置、記録の保存までを7つのステップに分けて整理したものです。条番号と要件は、法令本文(e-Gov法令API)と厚生労働省の通知・講習会サイトで確認しています。2026年10月16日時点の内容です。

医師個人の立場から見た制度は時間外労働が年960時間を超えたらで扱いました。本記事は病院側の段取りです。

先に答え: 面接指導はすべての病院・診療所の管理者の義務

根拠は医療法第108条第1項です。条文は、病院又は診療所の管理者は「当分の間、当該病院又は診療所に勤務する医師のうち、各月の労働時間の状況が厚生労働省令で定める要件に該当する者(以下この条において「面接指導対象医師」という。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師(中略)による面接指導を行わなければならない」と定めています。「しなければならない」型で、努力義務ではなく義務です。B水準や連携B水準、C水準の指定を受けているかどうかで、この義務の有無は変わりません。

対象者の要件は医療法施行規則第62条にあります。医業に従事する医師で、時間外・休日労働時間が「一箇月について百時間以上となることが見込まれる者」です。診療を直接の目的とする業務を行わない医師と、船員である医師は除かれます。「百時間を超えた者」ではなく「見込まれる者」と書かれている点が、体制づくりの出発点になります。超えてから動くのでは遅く、超えそうな医師を月の途中で拾い上げる仕組みが要ります。

厚生労働省医政局の事務連絡「医療法第25条第1項に基づく立入検査の実施上の留意事項について(面接指導の実施、勤務間インターバル及び代償休息の確保)」(令和6年3月15日)も、面接指導の実施は「全医療機関」に義務付けられると明記しています。同じ事務連絡は、いわゆるA水準医療機関についても「実施が必要となる」として、都道府県に周知を求めています。履行状況は医療法第25条第1項の立入検査で確認されます。

義務を果たさなかった場合の流れも確認しておきます。医療法第111条は、正当な理由なく第108条第1項の面接指導を行っていないと認めるとき、都道府県知事が開設者に改善命令を出せると定めています。その命令に違反すると、第148条により「六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金」の対象です。いきなり罰則ではなく、改善命令を挟む構造です。

医師本人にも義務があります。第108条第2項は、面接指導対象医師は管理者が行う面接指導を「受けなければならない」としています。ただし書きで、管理者が指定した面接指導実施医師以外の実施医師による面接指導を受け、その結果を証明する書面を提出したときは、この限りでないとされています。

図1: 面接指導の体制構築7ステップ(対象者の把握から記録保存まで。概念図)

ステップ1: 対象者の把握は「毎月1回以上の確認日」から

体制づくりの最初は、労働時間の把握です。医療法施行規則第61条第1項は、管理者に対し、タイムカードによる記録やパーソナルコンピュータ等の使用時間の記録といった「客観的な方法その他の適切な方法」で医師の労働時間の状況を把握することを義務付けています。同条第2項は、その記録を作成し「三年間保存するための必要な措置」を講じることを求めています。

そのうえで第61条第3項が、管理者は「毎月一回以上、一定の期日を定めて」、勤務する医師が面接指導対象医師と、後述する月155時間超の措置対象者に該当するかどうかを確認しなければならないと定めています。確認日は院内規程に書き、勤怠の締めと連動させます。

ここで落としやすいのが、副業・兼業先の時間です。時間外・休日労働時間は自院分だけで判断できません。大学からの派遣医師や、夜間に外勤している常勤医は、自院の数字だけを見ると100時間に届かないことがあります。前述の事務連絡も、立入検査で確認する対象者には副業・兼業で大学病院等から派遣を受けている医師を含むとしています。外勤時間の申告の集め方は病院の医師副業・兼業の時間管理で詳しく扱いました。

もう一つは、管理監督者の扱いです。事務連絡は、診療に従事する医師であれば管理監督者も対象になることに留意するよう求めています。診療部長や医長クラスを勤怠管理の外に置いている病院は、ここで漏れが出ます。一方、管理者は面接指導対象医師の対象外とされ、一人で有床診療所を開設している医師は面接指導の対象にならない、とも書かれています。

ステップ2: 面接指導実施医師を確保する(院内か院外か)

面接指導を行う医師には資格要件があります。医療法施行規則第65条は、面接指導実施医師の要件を2つ定めています。1つは、面接指導対象医師が勤務する病院又は診療所の「管理者でないこと」。もう1つは、「医師の健康管理を行うのに必要な知識を修得させるための講習を修了していること」です。

講習は、厚生労働省の委託サイト「面接指導実施医師養成ナビ」でeラーニングとして提供されています。サイトの説明によれば、医師免許を有する者であれば受講でき、費用はかかりません。カリキュラムは5章で、動画視聴が約200分、確認テストが20問です。修了証の発行には、動画視聴に加えて確認テストに全問正解する必要があります。同サイトのFAQは、修了証に「有効期限はありません」と回答しています。

実務で引っかかりやすい点が2つあります。1つ目は、産業医資格の扱いです。同サイトのFAQは、産業医の資格を所有する医師も、面接指導実施医師となるには講習の受講が必要だとしています。厚労省研究班の「面接指導の進め方クイックガイド」にも同じ趣旨の記載があります。産業医が院内にいるから大丈夫、とはなりません。

2つ目は、受講前の登録です。講習のユーザー登録には、医師免許情報が「医師等資格確認検索システム」に掲載されている必要があります。掲載されていない場合は先に掲載申請が要り、同サイトは登録に「数週間」かかるとしています。医師法に基づく2年に1度の届出をしていない医師は掲載されていないことがあるため、受講を依頼する医師には早めに確認してもらいます。

院内の医師に依頼するか、院外の医師に委託するかは病院の判断です。同サイトのFAQは、面接指導実施医師が自身の所属する医療機関以外の面接指導対象医師に面接指導を行うことは「可能です」と回答しています。医療法第109条も、管理者は地域で面接指導が適切に実施されるよう「相互に連携を図りながら協力しなければならない」と定めており、修了者が少ない病院は地域の病院同士で融通する選択肢があります。

図2: 面接指導実施医師を院内で確保するか、院外に依頼するかの比較(概念図)

法令上の欠格は「管理者」だけですが、直属の上司が面接すると本人は話しにくくなります。複数の診療科から実施医師を養成し、診療科をまたいで割り当てると運用しやすくなります。院外に依頼する場合は、情報提供の方法と、意見書を誰が受け取るかを契約前に決めておきます。

医師本人が別の実施医師を希望することもあります。その場合、本人が提出する証明書面には、医療法施行規則第66条で記載事項が決められています。実施年月日、対象医師の氏名、実施医師の氏名、睡眠の状況、疲労の蓄積の状況、その他の心身の状況の6項目です。

ステップ3: 面接の前に確認する5項目と、B・C水準とA水準の時期の違い

面接の前にも、管理者が確認すべき事項があります。医療法施行規則第63条は、管理者は面接指導対象医師について次の事項を確認し、時間外・休日労働時間が「一箇月について百時間に達するまでの間に」面接指導を行わなければならない、と定めています。確認事項は、勤務の状況、睡眠の状況、疲労の蓄積の状況、その他の心身の状況、面接指導を受ける意思の有無の5項目です。

時期については、同条ただし書きに例外があります。B水準・連携B水準・C-1水準・C-2水準の業務に従事する医師「以外の」面接指導対象医師について、確認の結果、疲労の蓄積が認められない場合は、100時間に達するまでの間に、又は「百時間以上となつた後遅滞なく」面接指導を行うものとされています。つまり、B・C水準の対象業務に従事する医師は常に100時間到達前です。それ以外の医師(A水準の医師)は、疲労の蓄積が認められなければ100時間到達後の遅滞ない実施も認められます。

「疲労の蓄積が認められる」かどうかの目安は、前述の立入検査に関する事務連絡に示されています。次のいずれかに該当した場合です。

  • 前月の時間外・休日労働時間数が100時間以上
  • 直近2週間の1日平均睡眠時間が6時間未満
  • 面接指導の希望が有
  • 「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」で、自覚症状がⅣ又は疲労蓄積度の点数が4以上

このいずれかに当たれば、A水準の医師でも100時間到達前の実施が必要になります。前月に100時間を超えていた医師は自動的にここに入るため、繰り返し長時間になる医師ほど、月の前半に面接を組む必要があります。

図3: 面接指導を行う時期の判断(B・C水準の対象業務とA水準の違い)

立入検査ではこの時期も確認されます。事務連絡は、面接実施日が月末近くである場合などには、面接指導実施日までの時間外・休日労働時間を確認するよう都道府県に求めています。100時間到達前に実施していない場合は、上記の例外に該当するかどうかが確認されます。事前確認で使ったチェックリストや睡眠時間の申告を残しておかないと、例外に当たることを説明できません。

事前確認が済んだら、実施医師へ情報を渡します。医療法第108条第3項と施行規則第67条により、管理者は対象医師の氏名と第63条の5項目に関する情報を、確認後「速やかに」提供しなければなりません。実施医師が面接に必要と認めて求めた業務上の情報も、求められた後速やかに提供します。クイックガイドは、事前に把握する情報として、過去3か月の副業・兼業も含めた時間外・休日労働時間、チェックリストの結果、睡眠負債の状況を評価する質問紙の結果、過去の面接指導結果及び意見書、長時間労働の理由と今後の見通しを挙げています。

図4: 1か月の中での面接指導の流れ(確認日から措置まで。概念図)

ステップ4: 面接で確認する4項目と、実施の環境

面接で何を確認するかは、医療法施行規則第64条が定めています。面接指導実施医師は、勤務の状況、睡眠の状況、疲労の蓄積の状況、その他の心身の状況の4項目について確認を行うものとされています。事前確認の5項目から「面接指導を受ける意思の有無」を除いた4項目です。

病院側が準備するのは、場所と時間です。クイックガイドは、面接指導は「プライバシーが確保される場所で実施する」としています。所要時間の目安は10〜40分程度で、措置不要となる場合の面接部分は5分程度を想定しています。会議室の予約枠を毎月押さえておくと、日程調整の手間が減ります。

睡眠と疲労の評価には、様式例で使われている道具があります。厚労省が公開する「長時間労働医師面接指導結果及び意見書」の様式例では、睡眠負債の状況と疲労の蓄積の状態をそれぞれ0(低)から3(高)で記入します。疲労の欄には「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」、睡眠の欄には本人報告と睡眠評価表が参照先として書かれています。病院側は、これらの質問紙を事前確認の段階で本人に記入してもらい、実施医師に渡す流れを作っておきます。

なお、面接指導実施医師養成ナビのFAQは、法令等で定められた問診票の様式はないと回答しています。ロールプレイ研修の問診票や、クイックガイドの「長時間労働面接振り返りシート」を参考に、各医療機関の実情に応じて作成するよう求めています。

ステップ5: 実施医師の意見を「遅滞なく」聴く

面接が終わったら、管理者は実施医師の意見を聴きます。医療法第108条第4項は、管理者は面接指導の結果に基づき、対象医師の健康を保持するために必要な措置について「面接指導実施医師の意見を聴かなければならない」と定めています。施行規則第68条は、この意見聴取は面接指導が行われた後「遅滞なく行わなければならない」としています。本人が別の実施医師の面接を受けた場合は、証明書面の提出後遅滞なくです。

意見の受け取り方は、様式例の意見書を使うのが分かりやすい方法です。様式例では、実施医師が「就業上の措置は不要です」「以下の心身の状況への対処が必要です」「以下の勤務の状況への対処が必要です」から選び、専門医受診勧奨、面談を含む産業医連携、上司相談などに丸をつけます。様式例には、実施医師はこの段階(管理者が措置内容を記載する前)で本書面を被面接医に渡すよう、注記があります。

ここで産業医との役割分担が問題になります。面接指導実施医師と産業医は、法令上は別の役割です。前者は医療法の面接指導を行う医師、後者は労働安全衛生法第13条により事業場ごとに選任される医師です。同じ医師が兼ねることも、別の医師が担うこともあり得ます。クイックガイドは、高リスク者は「産業医と連携することが重要」とし、その場で解決が困難な事項は実施医師だけで解決しようとせず産業医等と連携するよう求めています。クイックガイドの記入例には、帳票を「面接指導実施医師→産業医→人事→所属職場→人事→医師(産業医)→人事」と回し、人事が5年保管する流れも示されています。面接指導実施医師養成ナビは、2025年11月に『長時間労働医師への面接指導における病院産業医の役割と期待』という資料も公開しています。

ステップ6: 就業上の措置と、月155時間超の措置

意見を聴いたら、措置の要否を判断します。医療法第108条第5項は、管理者は実施医師の意見を勘案し「その必要があると認めるときは」、対象医師の実情を考慮して、労働時間の短縮、宿直の回数の減少その他の適切な措置を講じなければならないと定めています。施行規則第69条は、管理者が必要と認めるときは措置を「遅滞なく」行わなければならないとしています。

この条文は、必要と認めたときに措置を義務付ける形です。必要なしと判断することも認められますが、判断した事実は記録に残します。前述の事務連絡は、立入検査では意見書の「措置の要否や措置の内容」が記載されていることを確認するとし、記載例として「就業上の措置は特に指示なし」から、当直・連続勤務の制限、就業場所の変更、時間外労働の制限までを挙げています。この確認は措置の妥当性ではなく、意見聴取・要否判断・措置の実施という手続の有無を見る趣旨だとも明記しています。

これとは別に、月155時間を超えた医師には、意見の内容にかかわらず措置が要ります。医療法第108条第6項は、労働時間の状況が「特に長時間であるもの」として省令で定める要件に該当する場合、管理者は「労働時間の短縮のために必要な措置を講じなければならない」と定めています。施行規則第70条は、その要件を時間外・休日労働時間が「一箇月について百五十五時間を超えた者」とし、措置は該当した場合に遅滞なく行うとしています。こちらは「必要と認めるとき」という限定がありません。155時間を超えた時点で、労働時間短縮の措置の記録が必要になります。

図5: 医師の面接指導に関わる月あたりの基準時間(労働安全衛生規則第52条の2、医療法施行規則第62条・第70条)

措置を実際に回すには、代わりの人手が要ります。当直回数を減らせと意見書に書かれても、当直表を組む診療科長が代替要員を持っていなければ実行できません。措置の決定権者を院内規程で決め、診療科長・人事・事務長の誰が当直表を組み替えるかを明確にしておきます。B・C水準の対象医師については、勤務間インターバルと代償休息の確保も別途義務です。運用は医師の勤務間インターバルと代償休息で整理しています。

ステップ7: 記録は5年保存、労働時間の記録は3年

最後が記録です。医療法第108条第7項は、管理者は面接指導、実施医師の意見の聴取、第5項と第6項の措置の内容を「記録し、これを保存しなければならない」と定めています。保存期間と記載事項は施行規則第71条にあります。記録は「五年間保存」で、記載すべきは、第64条の確認事項、第66条の証明書面の記載事項、聴取した実施医師の意見、第5項・第6項の措置の内容です。電磁的記録での作成・保存も認められており、その場合は必要に応じて直ちに画面表示や書面化ができるようにしておく必要があります。

保存期間が2種類ある点に注意します。面接指導の記録は5年(第71条)、労働時間の状況の記録は3年(第61条第2項)です。勤怠システムの保存設定と、意見書ファイルの保存設定を別々に確認してください。

立入検査で何を出すかも決まっています。事務連絡によれば、都道府県は「直近1年間における月別の時間外・休日労働時間が100時間以上となった医師の一覧」の提示を求め、そこから確認対象を抽出します。一覧には「年月」「氏名」「時間外・休日労働時間数」の記載が求められ、確認対象は「必ず複数名(2名以上)」とされています。抽出された医師について、意見書の記載事項、適切な時期の実施、実施医師の講習修了(修了証書の確認)と管理者でないことが確認されます。月155時間超の医師についても、同様の一覧と措置内容の記録が求められます。

図6: 立入検査に備えて揃えておく記録のチェックリスト(事務連絡に基づく)

労働安全衛生法の面接指導との関係: 二重に行う必要はない

病院は、労働安全衛生法の事業者でもあります。一般の労働者向けには、労働安全衛生法第66条の8が医師による面接指導を定めています。要件は労働安全衛生規則第52条の2で、週40時間を超えた時間が「一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者」です。同規則第52条の3により、この面接指導は労働者の「申出により」行うものとされています。医療法の面接指導が、本人の申出を待たず100時間以上の見込みで管理者が行う義務であるのとは、出発点が違います。

両者が重なる部分は、法令の側で調整されています。医療法第108条第8項は、面接指導対象医師に労働安全衛生法第66条の8第1項の面接指導(省令で定める要件に該当するものに限る)が行われている場合には、医療法の面接指導を「行うことを要しない」と定めています。施行規則第72条は、その要件を労働安全衛生規則附則第19条により行われるものとしています。附則第19条は、月100時間以上が見込まれる特定医師を「面接指導対象医師」として労働安全衛生法の対象に加えつつ、管理者が労働基準法施行規則に基づく面接指導を行い、かつ書面の提出があった医師は除いています。同条第3項は、事業者が管理者にその面接指導を行わせる場合、時間の通知(第52条の2第3項)や申出による実施(第52条の3)などの規定を適用しないとしています。

月100時間以上が見込まれる医師について、医療法と労働安全衛生法の面接指導を別々に2回行わなくて済むよう、条文が組まれているということです。一方、月80時間を超え100時間未満の医師は、医療法の対象外でも、疲労の蓄積があり申出があれば労働安全衛生法の面接指導の対象です。こちらは労働安全衛生法の面接指導の枠組みで対応します。2つの制度の違いは、表にすると次のとおりです。

項目医療法第108条労働安全衛生法第66条の8
対象月100時間以上の見込み(医業に従事する医師)月80時間超かつ疲労の蓄積(労働者一般)
きっかけ管理者が確認して実施労働者の申出
実施する医師講習修了・管理者でない医師医師
記録記録し5年保存(規則第71条)記録義務(第66条の8第3項)

36協定との関係もあります。労働基準法施行規則第69条の3第2項は、医師について36協定に定める事項として、月100時間以上が見込まれる特定医師に面接指導を行わせること、その結果に基づき医師の意見を聴かせること、必要な措置を講じさせることなどを挙げています。同規則第69条の4は、これらの事項を協定に定めた場合、月100時間未満という上限を外して年960時間とする構造です。

努力義務と義務の区別: 第107条・第110条も確認する

面接指導の周辺には、義務と努力義務が混在しています。医療法第107条は、管理者は医師の健康状態を把握し、適切に対応するために必要な体制を「整備しなければならない」と定めています。これは義務で、第111条の改善命令の対象にも含まれます。

一方、第110条の勤務間インターバルは、特定対象医師を除き、年720時間超の時間外労働が見込まれる医師など(施行規則第73条)について、休息時間を確保する「よう努めなければならない」とする努力義務です。A水準の医師への勤務間インターバルは努力義務、面接指導は義務と、強さが違います。

体制づくりでつまずく2つの場面

1つ目は、100時間到達前の実施が間に合わないケースです。月末に救急対応が続いて急に100時間に近づく医師は、月初の確認日では拾えません。面接指導実施医師養成ナビのFAQは、月100時間以上となる前の実施が難しいのではないかという問いに対し、結果的に月100時間以上とならない場合でも、医師の健康状態を鑑みて行うことが重要だと回答しています。前月100時間以上の医師は翌月も対象になりやすいため、翌月前半にあらかじめ面接枠を入れておく運用が考えられます。

2つ目は、時間外が減らない診療科です。毎月同じ医師が面接対象になり、意見書に毎回「当直回数の制限」が書かれても、代わりがいなければ措置は実行できません。面接指導の結果を、年単位の医師労働時間短縮計画や採用計画に戻す回路を作っておく必要があります。

まとめ: 次の一歩は「確認日」と「修了者の名簿」から

最初に決めるのは、毎月の確認日です。客観的な方法で把握した労働時間と、副業・兼業先の時間を合わせ、月100時間以上が見込まれる医師と月155時間を超えた医師を毎月確認します。

次に、面接指導実施医師の名簿を作ります。講習修了証の写しを人事で保管します。産業医資格だけでは要件を満たしません。受講前の医師等資格確認検索システムへの掲載確認に数週間かかることもあるため、早めに依頼します。

最後に、意見書の流れを決めます。事前確認の5項目、面接の4項目、実施医師の意見、措置の内容が1枚に残る様式を使い、5年間保存します。B・C水準の対象業務に従事する医師は常に100時間到達前、A水準の医師も疲労の蓄積が認められれば到達前という時期の違いを、確認日の運用に組み込んでおきます。

参考文献

  • 医療法(昭和23年法律第205号)第107条〜第111条、第148条(e-Gov法令検索)
  • 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第61条〜第72条(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第13条、第66条の8(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第52条の2、第52条の3、附則第19条(e-Gov法令検索)
  • 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第69条の2〜第69条の4(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省医政局医事課医師等医療従事者働き方改革推進室 事務連絡「医療法第25条第1項に基づく立入検査の実施上の留意事項について(面接指導の実施、勤務間インターバル及び代償休息の確保)」(令和6年3月15日)
  • 厚生労働省「面接指導実施医師養成ナビ」(講習会の概要・FAQ)
  • 令和4年度厚生労働科学特別研究事業 研究班「面接指導の進め方クイックガイド」
  • 厚生労働省「長時間労働医師面接指導結果及び意見書(様式例)」