初期研修を終えて専攻医になると、学会の年会費、試験の受験料、合格後の認定料、5年後の更新料と、支払いが数年にわたって続きます。1回ごとの金額は数万円でも、合計がいくらになるのかを示した資料は意外にありません。この記事では、日本専門医機構と内科・外科・小児科の3学会が公表している料金を、2026年10月20日時点で確認できた金額だけで積み上げます。あわせて、同じ金額でも「自分で払う」か「勤務先が負担する」かで手取りへの影響がどう変わるかを整理します。

先に答え: 公表料金だけで積むと8年間で13万〜17万円台

初期研修修了から専攻医3年、専門医取得、取得から5年後の初回更新までを1本の線で見ると、学会と機構に払う「制度上の費用」は次のとおりです。いずれも各団体の公表ページで確認した税込額で、学術集会の参加費、交通費、宿泊費、教材費は含みません。

領域入会・年会費(8年分)受験料認定料・登録料初回更新料合計
内科72,000円30,000円11,000円16,000円129,000円
外科82,000円22,000円44,000円22,000円170,000円
小児科80,000円30,000円31,000円未確認141,000円+更新料

8年分という期間は、専攻医3年と専門医取得後5年を足した前提で、記事内で置いた計算上の仮定です。年会費は2026年10月時点の額が8年間変わらないものとして掛け算しています。小児科は、更新料を一次資料で確認できなかったため、表では「未確認」とし、合計にも入れていません。推測の数字は入れていません。

ここから分かることは2つあります。1つめは、費用の中心が試験や認定ではなく、毎年積み上がる年会費だという点です。内科では8年間の年会費が合計の半分を超えます。2つめは、領域によって認定料の設計が違う点です。内科学会は学会としての認定料を設けておらず、機構の11,000円だけです。外科学会は料金表上の認定料が44,000円で、構造が大きく異なります。

図1: 初期研修修了から初回更新までの支払いの流れ(概念図)

日本専門医機構に払う費用: 認定も更新も11,000円

新しい専門医制度では、領域学会の審査とは別に、日本専門医機構の認定を受けます。機構の「専門医の方 よくある質問」では、機構専門医の認定料と更新料はいずれも11,000円(税込)と案内されています。支払いは機構の「JMSB Online System+」で行う形ですが、同ページでは現時点で一部領域のみの対応とされています。認定証の再発行や英文認定証の発行には別途5,500円(税込)がかかります。

機構に払うのはこの認定料と更新料で、試験の受験料や学会の会費は各学会に払います。つまり、専門医の費用は「機構の固定額」と「学会ごとに違う額」の二層構造になっています。総額の差を生むのは後者です。機構の額はどの領域でも同じなので、領域を比べるときは学会側の年会費・受験料・認定料・更新料の4項目を並べれば足ります。この記事の表もその4項目で組んでいます。

支払先項目金額(税込)
日本専門医機構専門医認定料11,000円
日本専門医機構専門医更新料11,000円
日本専門医機構認定証再発行・英文認定証5,500円

内科: 学会認定料がなく、合計は約13万円

日本内科学会の「会費に関する規則」第2条は、会費を年額9,000円と定めています。同規則には入会金の定めは見当たりません。専攻医3年と取得後5年の8年分で72,000円です。

2026年度(第6回)の内科専門医資格認定試験は2026年5月31日に実施され、受験料は30,000円(税込)でした。試験案内には、合格後に機構の認定料11,000円(税込)が別途かかると書かれています。内科学会の「内科専門医の認定と更新」のページでは、学会としては「旧制度も新制度においても認定料は設けておりません」と明記されています。

更新時は、学会の更新料5,000円(税込)と機構の更新料11,000円(税込)の合計16,000円です。

時期項目金額
毎年内科学会 年会費9,000円
専攻医修了時専門医試験 受験料(2026年度)30,000円
合格後機構 認定料11,000円
5年後学会更新料+機構更新料16,000円

図2: 内科・外科・小児科の費用内訳の比較(各学会公表値から計算)

外科: 認定料44,000円が効いて約17万円

日本外科学会の入会案内では、入会時に会費年額10,000円と入会審査手数料2,000円、合計12,000円を送金する手順になっています。8年間では、初年度12,000円と以後7年の70,000円で82,000円です。

試験と認定の費用は、学会の「外科専門医制度の申請手数料等」(Last Update: 2026年2月8日)の料金一覧表(税込)に載っています。新制度の新規専門医は、筆記試験の受験料が22,000円、認定料が44,000円で、申請手数料の欄は「―」です。更新は申請手数料11,000円と認定料11,000円です。申請手数料には「サブスペシャルティ専門医との連動更新の際は不要」という注記があります。

区分申請手数料認定料受験料
専門医(新制度新規)―44,000円22,000円
専門医(更新・再取得・移行)11,000円11,000円―
指導医(新規・更新・再選定)11,000円22,000円―

注意点が1つあります。外科学会の料金表に載っている認定料44,000円と、機構の認定料11,000円との関係(内数か別払いか)は、料金表の文面だけでは判断できませんでした。この記事の合計は料金表の額をそのまま使っています。別払いであれば合計はさらに11,000円増えます。参考までに、学会の「新専門医制度における外科専門医試験について」(Last Update: 2026年8月10日)では、2026年度試験の受験料22,000円(税込)と、二次審査の合格後に振り込む認定料44,000円(税込)が示され、振込完了後に機構から認定証が届く流れが書かれています。このページには機構へ別に11,000円を払う記載はありませんが、内数であるとも明記されていないため、申請前に学会の案内で確認してください。

小児科: 学会の登録料20,000円と機構の11,000円

日本小児科学会の会費は年10,000円です。学会のページには、年度(3月1日から翌年2月末日)の途中で入会しても同額で、遡っての納入は認められないとあります。8年分で80,000円です。

新規の小児科専門医(機構認定プログラム制)では、合格者が学会に登録料20,000円を納め、その後、機構のシステムから認定料11,000円(税込)を払う流れになっています。合わせて31,000円です。受験料は、学会が2025年12月1日付で出した第6回(2026年度)小児科専門医試験【日本専門医機構認定プログラム制】の告示に、30,000円(税込)と書かれています。郵便振替で納め、納入された受験料はいかなる事由でも返還しないとされています。同じ告示の「小児科専門医の登録」の項でも、登録料20,000円(税込)と機構が定めた認定料11,000円(税込)を納めると明記されています。一方、更新料は本稿で確認したページと告示には載っていなかったため、金額を書いていません。

小児科で年度の始まりが3月である点は、ほかの学会と比べて見落としやすいところです。学会のページでは、初年度の年会費を2月に納めた場合は、原則として翌年度の3月1日からの入会扱いになると案内されています。なお外科学会の会計年度は2月1日から翌年1月31日までで、学会によって区切りが違います。

時間軸で見る: いつ、どこに、いくら払うか

費用は一度に来るのではなく、8年間に散らばって発生します。専攻医の時期は年会費だけが続き、修了年に受験料、合格後に認定料がまとまって来ます。そこから5年は再び年会費だけになり、更新年に更新料が加わります。

図3: 内科を例にした支払い時期のタイムライン(内科学会・機構の公表値)

年ごとの支出は年会費の数千円から1万円が中心で、受験・認定の年と更新の年だけ膨らみます。専攻医の給与水準と手取りの考え方は「専攻医の給料と手取り」で整理しています。

なお、表に入れていない費用のほうが大きくなる例は珍しくありません。学術集会の参加費、学会発表のための出張、e-learningや講習会の受講費などです。更新には単位の取得が必要で、そのための講習会参加にも費用がかかります。更新要件を満たせなかったときの扱いは「専門医を更新できないとき」で扱っています。

サブスペシャルティを重ねると費用は二重になる

基本領域の専門医を取得したあと、循環器、消化器、呼吸器などのサブスペシャルティ専門医に進むと、その学会の年会費と、試験・認定・更新の費用が上乗せされます。基本領域の学会を退会するわけにはいかないので、年会費は2学会分、3学会分と並行して払い続けることになります。

外科学会の料金表にある「サブスペシャルティ専門医との連動更新の際は不要」という注記のように、学会側でも二重払いを減らす仕組みを一部で用意しています。ただし、どこまで連動するかは学会ごとに違います。どの領域に進むかの判断材料は「サブスペシャルティの選び方」を参照してください。

サブスペシャルティの学会料金は種類が多いため、この記事では数字を挙げていません。進む領域が決まったら、その学会の「入会案内」と「専門医制度の手数料」の2ページを開き、上の表と同じ形で8年分を積み上げてみることをおすすめします。

図4: 基本領域にサブスペシャルティを重ねたときの費用の構造(概念図)

誰が払うかで手取りへの影響が変わる

同じ13万円でも、自分の給与から払うのか、勤務先が負担するのかで、手取りへの影響は変わります。ポイントは「税引き後のお金で払うか、税がかからないまま払われるか」です。

勤務先が負担する場合

国税庁タックスアンサーNo.2601は、所得税基本通達36-29の2を根拠に、役員や使用人に「職務に直接必要な技術や知識を習得させ、または免許や資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用」などに充てる費用を支給する場合、「適正なものに限り、給与として課税しなくてもよい」としています。

ここで要件は2つです。職務に直接必要であること、そして金額が適正であることです。専門医の取得が勤務先での診療に直接関わることは多いでしょう。ただ、この通達が直接名前を挙げているのは研修会・講習会の出席費用や大学等の聴講費用です。学会の年会費や機構の認定料がどこまで含まれるかは、勤務先の経理と税務上の整理によります。学会費の扱いの詳細は「医師の学会費は経費になるか」で扱っているので、ここでは繰り返しません。

自分で払う場合

勤務医が自分で払った学会費や受験料は、原則として給与所得の計算で差し引けません。給与所得者には給与所得控除があり、必要経費を個別に引く仕組みになっていないためです。

例外が特定支出控除です。国税庁No.1415によると、特定支出には研修費、資格取得費、図書費などが含まれます。ただし控除できるのは、特定支出の合計が「給与所得控除額の2分の1相当額を超えるとき」の超える部分だけです。さらに、職務に直接必要であることについて、給与の支払者などの証明が必要です。

給与収入が850万円を超えると給与所得控除額は上限の195万円です(国税庁No.1410。令和8年分・令和9年分に適用される改正後の表でも同じ)。その2分の1は97万5千円です。専門医の制度費用は8年分を合計しても十数万円で、1年あたりでは数万円にとどまります。ほかの特定支出をよほど積み上げない限り、この基準を超えることはまずありません。

図5: 特定支出控除の判定(国税庁No.1415・No.1410)

手取りで比べると

自分で払う13万円は、税金を引かれたあとの手取りから出ています。同じ13万円を勤務先が非課税で負担してくれれば、手取りは13万円そのまま残ります。両者の差は、13万円を手取りで残すために必要な給与の額と考えると分かりやすくなります。

たとえば所得税と住民税を合わせた限界税率を仮に43%とすると、手取り129,000円を残すには、129,000÷(1−0.43)で約226,000円の給与が必要です。この税率は説明のために置いた仮定で、実際の率は収入や控除によって変わります。社会保険料を含めると差はさらに広がります。

同じ計算を外科の170,000円に当てはめると、170,000÷0.57で約298,000円になります。小児科の141,000円(更新料を除く)なら約247,000円です。いずれも同じ43%の仮定による計算値です。8年間で見れば、勤務先負担と自費の差は内科で約97,000円、外科で約128,000円となり、制度費用そのものに近い額が税金の分だけ上乗せされる計算になります。

図6: 自費か勤務先負担かで必要な給与額が変わる(計算値・税率は仮定)

このため、勤務先に費用補助の制度があるかどうかは、転職や異動の比較で確認する価値があります。年会費の補助、受験料・認定料の負担、学会出張の扱いの3点を聞いておけば十分です。給与額が同じでも、補助の有無で実質的な差が数十万円になることがあります。

費用を確認するときの3つの手順

最後に、自分の領域で費用を積み上げるときの手順をまとめます。

  1. 所属予定の基本領域学会の「会費規則」または「入会案内」を開き、年会費と入会時の手数料を確認する
  2. 同じ学会の「専門医制度の手数料」ページで、受験料・認定料・更新時の申請手数料を確認し、機構の11,000円が内数か別払いかを読み取る
  3. 勤務先の人事・経理に、学会費と専門医関連費用の補助制度と、その税務上の扱いを確認する

学会の料金は改定されることがあります。外科学会の料金表にも最終更新日が書かれています。年度が変わったら、手順1と2のページの更新日を見直すと安心です。

合計の計算根拠を1行ずつ示す

冒頭の表の数字は、次の式で出しています。どの数字も各団体の公表額をそのまま使い、足し算と掛け算だけで出したものです。

内科は、年会費9,000円×8年=72,000円、受験料30,000円、機構認定料11,000円、更新料16,000円(学会5,000円+機構11,000円)で、合計129,000円です。

外科は、初年度の年会費と入会審査手数料12,000円、2年目以降の年会費10,000円×7年=70,000円、受験料22,000円、認定料44,000円、更新時の申請手数料11,000円と認定料11,000円で、合計170,000円です。

小児科は、年会費10,000円×8年=80,000円、受験料30,000円、学会の登録料20,000円、機構認定料11,000円で141,000円です。ここに更新料が加わります。

期間の置き方を変えれば合計も変わります。専攻医の期間が延びた場合や、初期研修中から学会に入会した場合は、年会費の年数を増やして計算し直してください。また、年会費は所属を続ける限り毎年かかる固定費です。専門医を取ったあとの5年間も同じ額がかかる前提で見ておくのが現実的です。

指導医・再取得まで進むと費用はさらに増える

専門医を維持するだけでなく、指導医として専攻医を受け持つ立場になると、別の費用がかかります。外科学会の料金表では、指導医(新規・更新・再選定)の申請手数料が11,000円、認定料が22,000円です。更新期限までに要件を満たせず、資格を取り直す場合の「再取得」も、同じ表で更新と同じ申請手数料11,000円・認定料11,000円の欄に入っています。

指導医の費用は、勤務先がプログラムの基幹施設や連携施設として指導体制を維持するための費用でもあります。個人の資格のためだけの支出とは言い切れないため、勤務先が負担する余地は専門医本人の費用より大きいと考えられます。指導医を引き受ける話が出たときは、費用負担の扱いも同時に確認しておくとよいでしょう。

よくある疑問

専攻医のうちに払った受験料は、合格しなかった場合に戻るのか、という質問があります。内科学会の2026年度試験案内は「納入された受験料はいかなる事由があっても返還いたしません」としており、小児科学会の告示にも同じ趣旨の定めがあります。不合格でも辞退でも戻らない前提で、受験の時期を決めるのが安全です。

海外留学や国際学会で英文の資格証明が要るときはどうするか、という質問もあります。機構の案内では、英文認定証の発行と認定証の再発行の手数料は5,500円(税込)で、申請と入金の確認後1か月以内に簡易書留で送られます。外科学会は、各種資格の証書類を原則として再発行せず、新制度の機構認定外科専門医については機構に証明書の発行を依頼するよう案内しています。留学の予定がある方は、発送までの期間を見込んで早めに手配しておくと安心です。

年会費を払い忘れたらどうなるか、も気になるところです。小児科学会は、年度を遡っての会費の納入は認められないと明記しています。8年間毎年続く支払いなので、口座振替やカード払いなど自動で払える方法がある学会ではそれを選んでおくと、払い忘れの心配が減ります。

まとめ: 年会費が主役、払い手で手取りが変わる

公表料金だけで積み上げると、初期研修修了から初回更新までの8年間で、内科は129,000円、外科は170,000円、小児科は141,000円に更新料を足した額になります。総額の多くを占めるのは毎年の年会費で、サブスペシャルティに進むとそれが重なります。

自分で払った費用を所得から引くのは、特定支出控除の基準を考えると現実的ではありません。勤務先が職務に必要な資格取得費用として負担してくれる制度があれば、手取りの面ではそのほうが有利です。費用そのものより、どの財布から出るかを先に確かめておくことが、手取りを守るいちばん確実な方法です。

参考資料