医師の定着率を上げたいという相談で最初に出てくるのは、たいてい施策の名前です。院内保育、時短勤務、評価制度、面談の頻度。しかし施策を並べる前に決めなければならないのは、自院の医師がどの理由で辞めているのか、その理由の分布です。この記事では、厚生労働省の勤務実態調査と検討会資料、日本医師会の女性医師調査、労働政策研究・研修機構の勤務医調査から、医師が職場を離れる理由を分布として確認し、上位の理由ごとに「病院側が制度上実行できること」「年間コスト」「効果を測る指標」を順に検証します。前提として、医師が辞める選択そのものを止める話は扱いません。
定着率は施策の数ではなく、理由と打ち手の一致で動く
先に結論を書きます。定着率を上げる作業は、労働環境のどの部分が離職の理由になっているかを特定し、その理由に対応する制度上の打ち手を、費用と測定指標をつけて短縮計画に載せることです。逆にいえば、理由の分布を確認しないまま施策を増やしても、どの施策が効いたのか判別できません。
この順序を裏づける数字があります。労働政策研究・研修機構(JILPT)が全国の20床以上の病院に勤務する勤務医3,467人から回答を得た調査で、勤務環境を改善するために有効な方策を尋ねたところ、上位は「医師数の増加(非常勤・研修医を含む)」55.4%、「当直明けの休み・休憩時間の確保」53.4%、「他職種との役割分担の促進」50.8%、「診療以外の業務の負担軽減」45.9%でした。一方で「職場風土の改善」は18.0%にとどまります(JILPT 調査シリーズNo.102。調査は2011年12月1日から9日までインターネットで実施、有効回答3,467件、報告書公表は2012年9月)。
この調査は2011年実施です。2024年4月の上限規制適用より前の数字であり、労働時間や業務時間の水準を現在の実態として読むことはできません。以下、この調査から引用するのは選択肢の間の順位関係だけで、水準の議論には後述する令和7年度の勤務実態調査を使います。順位構造も15年で変わりうる点は前提としてください。
つまり医師が挙げる有効な方策は、上位4つがすべて人員配置と時間配分の話です。風土や理念は最下位近くに位置します。定着の打ち手を検討する会議で語られる内容と、医師が有効だと考える内容の間には、この順位のずれがあります。
同じ調査(2011年)で、将来どのような働き方をしたいかを尋ねた結果も見ておきます。「今の職場(同じ病院・同じ診療科)で働きたい」が48.6%、「別の病院(診療科は同じ)に異動したい」が26.3%、「開業したい」8.9%、「医師として非常勤として勤務したい」7.8%、「診療を辞めたい」3.4%でした。診療科を変えたい層は合計2.3%しかいません。移動を考える医師の大半は、診療科ではなく勤務先を変えたいと考えています。これは、診療内容ではなく勤務条件が判断材料になっていることを示します。
辞める理由を一次データで分布として置く
理由の側から見ていきます。まず労働時間です。厚生労働省が令和7年10月に実施した勤務実態調査(医師票の回収23,089人、うち病院・常勤勤務医の分析対象13,205人)では、週労働時間60時間以上の病院常勤勤務医は15.0%でした。平成28年調査の39.2%から大きく下がっています。ただし診療科別に見ると、外科25.1%、救急科23.7%、産婦人科22.8%と、全体平均の1.5倍以上が残ります。施設別では大学病院の平均週労働時間が52.2時間、大学病院以外が44.3時間で、8時間近い差があります(厚生労働省 令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会 資料2-1、令和8年7月13日)。
週60時間は、時間外・休日労働の年960時間に換算される水準です。2024年4月から適用されたA水準の上限に相当します。自院の医師のうち何人がこの線の上にいるかは、短縮計画の集計で必ず把握しているはずの数字です。その人数が診療科ごとにどう偏っているかを見ないまま全院一律の施策を打つと、平均だけが改善して、偏りは残ります。
次に、中断と復職の理由です。日本医師会が病院勤務の女性医師10,373人から有効回答を得た調査では、1か月以上仕事を中断した経験がある人が4,905人、回答者の47%にのぼりました。中断の理由は期間によって構成が変わります。1か月以上1年未満では出産・子育てが84%、自分の病気療養・休養等が16%。1年以上3年未満では子育て等80%に次いで夫の都合と自分の留学・研究等がそれぞれ18%。3年以上では子育て74%、自分の留学・研究等36%、夫の都合31%です(日本医師会男女共同参画委員会・女性医師支援センター「女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書」平成29年8月)。
中断が長くなるほど、育児以外の理由が増えます。3年以上の層では留学・研究と配偶者の転勤で3分の1ずつを占めます。院内保育の整備だけでは、この層が戻る理由を作れません。
理由1 長時間労働に対して、制度上できることと、できないこと
上限規制の下で病院ができるのは、労働時間の総量を診療体制の側から削ることだけです。できないのは、上限を超える運用を続けながら医師の納得で乗り切ることです。
ここで実務上の分岐が出ます。年960時間を超える見込みの医師がいる場合、特例水準(連携B・B・C-1・C-2)の指定を受けなければ、その勤務は成立しません。指定には医師労働時間短縮計画の作成と、医療機関勤務環境評価センターの評価受審、都道府県知事の指定が必要で、指定は3年ごとに更新しなければ効力を失います。特例水準の実際の適用範囲は限定的です。特定労務管理対象機関から提出された短縮計画の参考資料は、令和7年度で454機関・対象医師30,184人でした(前掲 資料2-1)。全国の病院数から見れば少数です。
コストの側を見ます。労働時間短縮の体制整備には地域医療介護総合確保基金の事業区分Ⅵが使えます。令和8年度予算額は95億円(公費143億円)で、地域医療勤務環境改善体制整備事業は1床当たりの標準単価133千円、更なる労働時間短縮の取組を実施する場合は最大266千円までとされています。医師派遣の推進事業では派遣医師1人当たり1,250千円×派遣月数が目安です。ただし令和6年度の交付決定額156億円のうち、交付先の78%(122億円)は大学病院でした(前掲 資料2-1)。中小規模の病院が同じ枠に手を伸ばす前提で計画を立てると、資金計画が合わなくなります。
診療報酬側では地域医療体制確保加算があります。令和2年度改定で入院初日520点として新設され、令和4年度改定で短縮計画の作成を要件に加えて620点に、令和8年度改定では若手医師が減少し体制確保が必要な診療科を対象とする加算2(入院初日720点)が設けられました。救急搬送件数が年間2,000件以上といった実績要件があり、どの病院でも取れるものではありません。
効果を測る指標は、週60時間以上の医師数の実数に置きます。割合ではなく実数にすると、分母の増減に紛れません。当直明けの扱いについては、医師の当直明け勤務はなぜきついままかで制度と現実の差を整理しています。
理由2 当直と代償休息は、体制の有無が離職理由になる
JILPTの調査(2011年)で、業務ごとの負担感を見ると「日直及び宿直」を負担に感じる医師は48.6%でした。有効な方策の第2位が「当直明けの休み・休憩時間の確保」53.4%だったことと合わせると、当直そのものより当直後の扱いが問題になっていることが読み取れます。負担感の水準そのものは現在の数字ではありませんが、当直の前後で問題の置き場所が違うという順位関係は、後述する宿日直許可と代償休息の論点にそのまま対応します。
制度上できることは2つあります。ひとつは宿日直許可の実態を点検することです。許可基準は、通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後であること、宿日直中の業務が特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限られること、宿直では夜間に十分な睡眠が取り得ることを求めています(令和元年基発0701第8号)。許可を受けた宿日直中に通常と同態様の業務をまれに行った場合は、その時間について本来の賃金を支払う必要があります。
許可件数の推移は、この点検が一巡したことを示しています。全国の労働基準監督署における医師の宿日直許可件数は、令和2年144件、令和3年233件、令和4年1,369件、令和5年5,173件、令和6年2,715件、令和7年270件でした(前掲 資料2-3)。上限規制の適用直前に集中し、その後は落ち着いています。
問題は、許可の中身が現場に伝わっていない点です。自分の従事する宿日直業務が許可を得ているか知っている医師は71.0%(n=3,613)で、そのうち許可内容まで知っているのは79.2%(n=2,563)でした(前掲 資料2-1)。単純に掛け合わせると、許可内容まで理解している医師は6割弱です。許可を取った病院が「取得済み」と説明するだけでは、当直中に通常業務が発生したときの扱いが医師の側で判断できません。
もうひとつは代償休息です。B・C水準では勤務間インターバルの確保が義務で、確保できなかった場合の代償休息が求められます。1か月の時間外・休日労働が100時間以上となる見込みの医師には面接指導が義務づけられ、155時間を超える場合は遅滞なく労働時間短縮のための措置を講じなければなりません。面接指導の記録は5年保存です。面接指導を担う医師は講習の修了が必要で、令和8年5月25日時点の修了者は15,035名です(前掲 資料2-1、2-3)。
ここでのコストは、面接指導実施医師を院内に確保するための講習受講と、代替勤務者の人件費です。指標は代償休息の付与率(付与日数÷発生日数)に置きます。制度を整えたかではなく、実際に休息が付与されたかで測ります。
理由3 診療外業務は、負担感の最上位にある
JILPTの調査(2011年)で負担に感じる割合が最も高かったのは「上記以外の業務(書類作成等)」の64.0%でした。次いで「患者・家族からのクレーム対応」53.6%です。一方で同じ調査で業務時間に占める割合を尋ねると、平均は診療58.8%、日直及び宿直9.3%、書類作成等8.9%でした。時間としては1割弱の業務が、負担感では最上位に来るという逆転です。なお業務時間の構成比も負担感の割合も2011年時点の自己申告値であり、その後のタスク・シフト/シェアと上限規制を経た現在の構成比ではありません。ここで使えるのは「時間の長さの順位と負担感の順位が一致しない」という関係だけです。
この構造には制度上の受け皿があります。医師から他職種へのタスク・シフト/シェアです。厚生労働省が例示する医師事務作業補助者の業務には、診療録等の代行入力、損保会社等に提出する診断書や介護保険主治医意見書などの記載、医師が診察する前の問診票による病歴聴取、日常的に行われる検査の定型的説明と同意書の受領、入院時のオリエンテーション、院内での患者移送、症例実績やデータの整理と当直表の作成が含まれます(前掲 資料2-3)。診療報酬にも医師事務作業補助者の配置に係る加算が置かれています。
看護師側では特定行為研修があります。平成27年10月施行の制度で、21区分38行為が対象です。共通科目は250時間で、eラーニングと所属施設での実習が認められています(前掲 資料2-3、根拠は保健師助産師看護師法第37条の2)。手順書で事前に指示された範囲内であれば、医師の判断を待たずに特定行為を実施できます。
実務上の落とし穴は、労働時間の切り分けです。研鑽の区分けを明確にするための規程や区分表があり運用されている病院は36.3%、規程等はあるが運用されていない病院が5.2%、規程等がない病院が58.4%でした(n=1,886)。整備していない理由の第1位は「診療・教育・研究との切り分けが難しく判断できない」29.2%、第2位は「申請・記録・承認などの手続が具体化されておらず、運用体制が整っていない」21.3%です(前掲 資料2-1)。書類業務を減らしたつもりでも、切り分けの規程がなければ、削減できた時間が数字として残りません。
指標は医師1人当たりの代行入力件数、または書類作成に要した時間の申告値に置きます。医師採用にかかる費用構造との関係は医師採用のコスト構造で整理しています。
理由4 出産・育児と復職を、常勤枠の外側で設計する
日本医師会の調査(平成29年8月報告、以下同じ)で、仕事を続ける上で必要と思う支援を分類すると、勤務環境の改善を回答者の96%、子育てに関する支援を88%、復職に関する支援を38%が挙げました。復職支援の数字が相対的に低いのは、調査対象が現に病院に勤務している医師であるためで、報告書自身が休職中の潜在医師の声が反映されていない点に留意を求めています。
復職の行き先には実データがあります。厚生労働省が医師届出票をもとに、休業取得中と回答しその後復帰した5,786組を追跡した集計では、休業中に常勤だった4,635人に対し復職後の常勤は4,274人で361人減り、非常勤は1,085人から1,357人へ272人増えました。勤務先の種別では、病院の勤務者が3,081人から3,050人へほぼ横ばいだった一方、診療所の勤務者が368人から729人へおよそ2倍になっています(第12回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会 資料1、令和7年11月20日)。
復帰時に常勤以外の形を選ぶ人が増え、病院ではなく診療所へ移る流れがあるということです。復職の受け皿が常勤枠しかない病院は、この移動を受け取れません。
制度上使える資源としては、女性医師支援センター事業(令和8年度予算額160,935千円)、子育て世代の医療職支援事業(同51,816千円、令和7年度の実施機関は8機関)、都道府県が地域医療介護総合確保基金で行う女性医師等就労支援事業があります。後者には相談窓口の設置、復職のための研修を実施する医療機関への補助、勤務環境改善の取組への補助が含まれます(前掲 資料2-1)。
指標は、中断者の復職率と復職後の在籍月数の2本に置きます。復職したかどうかだけを見ると、短期で再離職した場合に成功として計上されます。女性医師の復職の実務は女性医師の出産後の復職でも扱っています。
理由5 常勤前提の雇用設計そのものを見直す
JILPTの調査(2011年)で「医師として非常勤として勤務したい」が7.8%、勤続年数が長くなるほどその割合が高くなっていました。医師届出票の追跡でも復職後に非常勤が増えています。常勤か退職かの二択しか用意していない病院は、非常勤で続けたい層を退職として失います。
ここで制度上できることは、短時間常勤と非常勤に職位と評価を与えることです。できないのは、雇用形態の違いを理由に説明できない待遇差を置くことです。有期・短時間の職員との不合理な待遇差は、パートタイム・有期雇用労働法が禁じています。副業・兼業がある医師については、面接指導の確認事項に前月の休日・時間外労働時間を副業・兼業も自己申告等により通算して把握することが挙げられており、他院での勤務を把握する手順を定めておく必要があります(前掲 資料2-1)。
コストは、常勤1人分の業務を複数名に分けたときの引き継ぎ時間と、社会保険の適用判断にかかる事務です。指標は常勤換算数に対する実人数の比に置きます。この比が上がっていれば、働き方の幅が広がったと判断できます。非常勤中心の働き方を選ぶ医師側の事情は医師が非常勤だけで働くと社会保険はどうなるかにまとめています。
若手医師の実感と、病院側の認識の差
打ち手の効果を測るうえで、医師側の受け止めを確認しておく価値があります。日本専門医機構が実施した令和8年度専攻医アンケートでは、勤務先で医師の働き方改革がどの程度進んでいるかについて、「期待以上にかなり進んでいる」6.2%と「期待よりも進んでいる」35.6%の合計が41.8%、「期待よりあまり進んでいない」36.5%と「全く進んでいない」10.0%の合計が46.5%でした(n=12,014)。年間の時間外・休日労働が960時間を超える医師に限ると、進んでいるとする回答は32.6%、進んでいないとする回答は59.5%です(前掲 資料2-1)。
一方、改革の方向性については「すでに効果を感じており、今後もこの方向性で進むべき」18.1%と「効果はあまりみられていないが、方向性としては進むべき」39.4%で合計57.5%、「現場への悪影響があり、見直すべき」18.3%、「自分にとって不利益が大きく、進めるべきではない」3.6%でした(n=12,246)。
方向性への支持は過半数ある一方、自院で進んでいる実感は半数を下回ります。労働時間の長い医師でその差が大きくなります。病院側が施策を実施したという認識と、医師が変化を感じたかどうかは別に測る必要があります。
効果測定の指標を、施策より先に決める
定着率という言葉は定義が曖昧です。測るなら、分母と期間を先に固定します。実務的には次の3点を分けて置くと判断に使えます。
1年在籍率(起算日から12か月後に在籍している医師数÷起算日の在籍医師数)、常勤換算数に対する実人数の比、そして週60時間以上の医師の実数です。1本目は結果指標、2本目と3本目は先行指標として機能します。結果指標だけを追うと、改善が確認できるのが1年後になります。
測定で外してはいけないのは、退職理由の記録方法です。退職時のヒアリングを管理者が実施すると、記録される理由が「家庭の事情」「キャリアアップ」に寄ります。理由の分布を自院で把握したいのであれば、記録は人事部門が定型の選択肢で取り、管理者の評価と切り離して集計します。メンタル面の事由で離職に至る経路については医師のメンタルヘルス休職、決定から復職までの手続きを参照してください。
効きにくい打ち手と、混同されやすい論点
やっても測れない、あるいは制度上成立しない打ち手を整理しておきます。
理念の共有や風通しの改善は、JILPTの調査(2011年)で有効な方策として挙げた割合が18.0%と下位でした。無意味というより、上位の4項目を動かさずにこれだけを行っても順位が入れ替わらないという意味です。
退職の引き止めを条件づける設計も成立しません。奨学金や研修費用の返還を退職の抑止に使う運用は、労働基準法が禁じる賠償予定に触れる可能性があります。退職時期を病院側が一方的に遅らせることもできません。定着の打ち手は、残る選択を選びやすくするものに限られます。
医師不足を理由に対策を止める判断も、データと合いません。令和7年度に厚生労働省が実施した地域医療提供体制への影響に関する調査では、医療提供体制の縮小・撤退を行った理由として「医師の不足(医師偏在、入局者数等の減少等)」が43.9%、「医師の働き方改革(時間外労働の上限規制等)」が24.4%、「地域医療構想」が18.3%でした(前掲 資料2-1)。不足が先にあり、規制はその次です。採用が難しい病院がどの条件で詰まっているかは医師の求人に応募が来ないクリニックの条件を需給で診断するで診断の手順を示しています。
都道府県の支援窓口を、計画づくりの段階で使う
自院だけで制度の可否を判断しなくてよい仕組みがあります。医療法第30条の19は、病院または診療所の管理者に対し、勤務する医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に資する措置を講ずるよう努める義務を定めています。同第30条の20に基づき厚生労働大臣が定める指針が医療勤務環境改善マネジメントシステムに関する指針で、同第30条の21は、勤務環境改善に関する相談対応や情報提供などの事務を都道府県が実施するよう努めるものと定めており、この事務を担う窓口が医療勤務環境改善支援センターです。センターは平成29年3月までに全都道府県に設置されました。
センターには社会保険労務士等の医療労務管理アドバイザーと、医業経営コンサルタント等の医業経営アドバイザーが配置されます。令和6年度の活動実績では、医療労務管理アドバイザーの相談・個別支援の内容は「労働時間の管理」と「宿日直許可」が多く、医業経営アドバイザーでは「経営改善」が2割を超えて最多でした(前掲 資料2-1)。
体制には限りがあります。事務担当職員の1日あたりの配置人数は、およそ3分の2の自治体で1人または2人、1日あたりの専任者が0人の自治体は半数を超えます(令和7年4月1日時点)。医療労務管理アドバイザーは「常時配置」が78.7%ですが、配置場所はセンターと異なる場所が59.6%です。訪問支援を受けたい場合は、計画の締切直前ではなく年度の早い段階で相談を入れる必要があります。
まとめ: 次の一歩は理由の集計から
順序をもう一度整理します。最初に自院の退職者について、過去2年分の退職理由を人事部門の定型選択肢で集計します。次に週60時間以上の医師の実数を診療科別に出します。この2つを並べると、どの理由に対する打ち手から着手すべきかが決まります。
その上で、候補となる打ち手を4つの関門に通します。法令・通達で自院が実施できるか、年間費用と財源が特定できるか、効果を測る指標が先に決まるか、医師の選択を狭めていないか。通ったものだけを労働時間短縮計画または勤務環境改善の計画に載せ、年次のPDCAで評価します。
医師は勤務先を選べる職種です。定着率は、選ばれ続けるかどうかの結果指標にすぎません。動かせるのは労働時間と業務配分、そして常勤以外の選択肢の有無です。
