開業計画書のスタッフ欄を、看護師2名・受付2名あたりで埋めた記憶はありませんか。この人数は誰が決めたものでもなく、内覧会の写真や同期の開業例から逆算した数字であることが多いです。本記事では、無床診療所に法令上の最低人数があるのかを一次資料で確認したうえで、診療報酬の加算が要求する人員、運営上あった方がよい人員の順に積み上げ、各段階で人件費が固定費としていくら乗るかを賃金統計の実数で示します。
結論: 無床診療所に、医師以外の法定人員配置標準はない
先に答えを書きます。無床診療所に、看護師や事務職の法定人員配置標準は存在しません。
人員配置標準の根拠条文である医療法施行規則第19条は、第1項の冒頭が「法第二十一条第一項第一号の規定による病院に置くべき医師及び歯科医師の員数の標準は、次のとおりとする」です。対象は病院であって、診療所は入っていません。同条第2項が薬剤師・看護師および准看護師・栄養士等の員数の標準を定めていますが、これも「病院の従業者及びその員数に係るものに限る」と括弧書きで限定されています(e-Gov法令検索・医療法施行規則)。
診療所について員数の標準を定めている条文は、第21条の2です。こちらは「法第二十一条第二項第一号の規定による療養病床を有する診療所に置くべき医師の員数の標準は、一とする」と始まり、同条第2項で看護師および准看護師を療養病床の入院患者4人につき1人、看護補助者も同じく4人につき1人と定めています。つまり、看護職員の配置標準がかかるのは療養病床を持つ診療所だけです。外来のみの無床診療所は、この条文の射程外です。
「標準」という語にも注意が必要です。これは罰則を伴う禁止規定ではなく、都道府県が条例を定めるにあたって従うべき基準、あるいは参酌すべき基準として書かれています。義務・努力義務・配慮義務の区別で言えば、無床診療所の看護職員数についてはそもそも義務規定も努力義務規定も置かれていない、というのが正確な記述です。
では何が残るか。診療所の開設にあたっては医療法上、臨床研修等修了医師である管理者を置くことが求められます。医師1人・スタッフ0人のクリニックは、法令上は成立します。実際にそう運営している診療所もあります。
ここから導かれる実務上の帰結は1つです。スタッフの人数は、法令が決めてくれないので、自分で決めなければならない。 そして決めた人数はそのまま毎月の固定費になります。開業資金の内訳と返済計画を先に固めていない段階でスタッフ数を決めると、返済原資を人件費で食う形になります(開業資金の内訳)。
第2層: 診療報酬の加算が要求する人員から積む
法令で決まらないなら、次に見るのは診療報酬の施設基準です。ここには明確な人員要件を持つものがあり、「その加算を取るかどうか」の決定が、そのまま「何人雇うか」の決定になります。逆に言えば、取らない加算のための人員は雇う必要がありません。
地域包括診療加算: 医師の増員は、3つの選択肢のうちの1つ
この加算は「医師を常勤換算2名以上そろえないと取れない」と説明されることがありますが、通知の原文はそう書いていません。地域包括診療加算1の施設基準は、通知上「(1)から(12)までの基準を全て満たしていること」とされたうえで(13)まで各号が置かれており、そのうち医師数に関わる(9)は**「以下のいずれか1つを満していること」**として三択で置かれています。
- ア 時間外対応体制加算1、2、3又は4の届出を行っていること
- イ 常勤換算2名以上(「基本診療料の施設基準等」別表第六の二に掲げる地域(医療資源の少ない地域)に所在する診療所にあっては1.4人以上)の医師が配置されており、うち1名以上が常勤の医師であること
- ウ 在宅療養支援診療所であること
届出様式でも「該当するものを1つ以上を選択すること」とされており、イは必須要件ではありません。地域包括診療加算2も、この(9)をそのまま引いています(令和8年3月5日保医発「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別添1 第2の3、別添7 様式2の3)。
ここを読み違えると人件費の判断が逆になります。医師を増やさなくても、アの時間外対応体制加算1から4のいずれかを届け出ていれば、あるいはウの在宅療養支援診療所であれば、(9)は満たせます。 医師1人で開業してこの加算を狙う場合の現実的な経路は、非常勤医師を週2日入れて常勤換算2名を作ることではなく、時間外の電話対応体制を整えて時間外対応体制加算を届け出るか、在宅療養支援診療所の届出を行うことです。イを選んだときにだけ、看護師の数倍という非常勤医師の人件費が先に立ちます。
なお(9)以外にも、24時間の往診等の体制確保、担当医の研修修了、外来診療から訪問診療への移行実績などが(1)から(13)に並びます。この加算の難所は人員の頭数ではなく、こうした体制と実績の側にあると見たほうが実務に近いです。
外来感染対策向上加算: 専任の院内感染管理者
外来感染対策向上加算は、感染防止対策部門内に専任の医師、看護師又は薬剤師その他の医療有資格者を院内感染管理者として配置し、感染防止に係る日常業務を行うことを求めています。院内感染管理者は手順書の作成と各部署への配布、職員を対象とした年2回程度の研修の実施などを担います。医療安全対策加算に係る医療安全管理者との兼任は認められていません(令和8年3月5日保医発・前掲通知 別添1 第1の4)。
ここで読み分けが必要なのが「専任」という語です。専任は、その業務に主として従事することを指し、他の業務を一切行わないことを求める「専従」とは区別されます。届出前に、狙う加算の要件が専任なのか専従なのか、常勤換算で足りるのか常勤の実員を要するのかを通知本文で確認してください。
加算を「取らない」という選択も設計に含める
医療DX関連の加算は令和8年度改定で再編が入りました。従来の医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算が廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算が新設されています。要件はオンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認の体制など体制面が中心で、人員の実員数を求めるものではありません。
つまり加算には「人を増やさないと取れないもの」と「体制と設備で取れるもの」があります。開業初年度は後者を優先し、人員要件のある加算は外来が立ち上がってから届け出る、という順番のほうが資金繰り上は素直です。
第3層: 運営上あった方がよい人員は「診療レーン」で数える
法令で決まらず、加算にも要件がない部分をどう決めるか。人数ではなく同時に走らせる診療レーンの数で数えると、根拠のある数字になります。
外来のボトルネックは通常、医師の診察時間そのものではなく、その前後です。受付と保険証確認、問診の聴取、処置や検査への案内、会計とレセプト入力。医師1人が1レーンで診察する場合、前後工程が詰まれば診察室が空いて回転が落ちます。
- 1レーン(医師1人・処置ほぼなし・予約制)では、受付兼医療事務1名で回る時間帯がある
- 処置や予防接種、検査を診察と並行させたい場合、看護職員1名を前後工程に固定する必要が出る
- 1日の来院が概ね40名を超え、かつ会計待ちの列が発生し始めたら、会計を分離するか自動精算機を入れるかの分岐に入る
重要なのは、この層の増員は売上が増えたから雇うのではなく、雇ってから売上が増えるかを賭ける性質を持つことです。賭けの原資は開業融資です。ここを読み違えると、患者数が伸びないまま人件費だけが残ります(開業が失敗する原因)。
人件費は固定費としていくら乗るか: 賃金統計の実数で見る
ここからが本題です。1名増やすと固定費がいくら増えるのかを、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表の実数で押さえます。
開業直後のクリニックは同調査の企業規模区分でいえば「10〜99人」に最も近いため、この区分の数値を使います。年収換算は、きまって支給する現金給与額を12倍し、年間賞与その他特別給与額を加えたものです。
| 職種(企業規模10〜99人・男女計・産業計) | 月例給 | 年間賞与 | 年収換算 |
|---|---|---|---|
| 看護師 | 33万9,500円 | 62万4,200円 | 約470万円 |
| 准看護師 | 29万2,400円 | 62万8,500円 | 約414万円 |
| 受付・案内事務員 | 25万7,400円 | 45万7,600円 | 約355万円 |
| 看護助手 | 23万3,100円 | 48万6,900円 | 約328万円 |
(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表より算出)
同調査には医療事務専用の職種区分がないため、受付業務に最も近い「受付・案内事務員」を代用しています。レセプト業務を担う医療事務経験者の実勢は、この数値より上に出ることがあります。
数値を扱うときの前提を2つ書きます。
第1に、これは全国平均であって相場ではありません。同調査の概況では、一般労働者の賃金の全国計が34万600円、最も高い東京都が41万8,300円と報告されています(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況)。職種を絞っても同様の地域差は残ります。開業地の実勢は、ハローワークや医療系求人の公開賃金を自分で集計して確認してください。
第2に、経験年数差があります。同調査の看護師(企業規模10〜99人)の平均勤続年数は8.1年、平均年齢46.3歳です。新卒に近い層と、外来のオペレーションを一人で組める層では賃金が同じになりません。「看護師の相場は月33万円」と一本の数字で丸めた計画は、採用できないか、採用できても定着しないかのどちらかに寄ります。
勤務先規模による差も、採用の難易度に直結する
同じ看護師でも、きまって支給する現金給与額は企業規模10〜99人で33万9,500円、100〜999人で35万7,700円、1,000人以上で38万6,800円です。
開業直後のクリニックは、賃金水準では大規模病院に届きません。採用の勝ち筋は、夜勤・当直がない、通勤が近い、休みが読める、業務範囲が明確といった非賃金条件の設計になります。求人票がこの条件を言語化できていないと、賃金だけで比較され、応募が来ません(クリニックの医師求人に応募が来ない)。
給与の外側に乗る事業主負担
固定費の計算で落としやすいのが事業主負担です。給与額面だけで人件費を積むと、実際の支出は数%上振れします。
厚生年金保険料率は18.3%で労使折半のため、事業主負担は9.15%です。これに子ども・子育て拠出金0.36%が事業主の全額負担で乗ります。健康保険料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は都道府県ごとに異なるため、開業地の料率を確認する必要がありますが、労使折半後の事業主負担はおおむね5%程度です。労働保険では、令和8年度の雇用保険料率は一般の事業で13.5/1,000、うち事業主負担が8.5/1,000です。労災保険率は医療業が含まれる「その他の各種事業」で3/1,000、これは全額が事業主負担です。労災保険率は令和8年度も令和7年度と同率とされています(日本年金機構、厚生労働省)。
看護師1名を年収470万円で雇った場合、事業主負担は厚生年金だけで約43万円です。健康保険(事業主約5%)で約24万円、子ども・子育て拠出金0.36%で約2万円、雇用保険8.5/1,000で約4万円、労災3/1,000で約1万円が加わり、合わせて概算で年73万〜75万円の上乗せになります。これに健康診断費用、ユニフォーム、研修費、採用時の広告費が加わります。年収の1.15倍から1.2倍を固定費として見込むのが、計画段階の安全側の置き方です。
何人まで雇えるかを、収入から逆算する
積み上げの逆側から上限を引きます。人件費は固定費なので、上限は「診療報酬の入金でいくらまで払えるか」で決まります。
診療所の経営指標として広く使われるのは人件費率です。ここで注意すべきなのは、開業初年度の人件費率は定常状態の数値と一致しないという点です。スタッフは開業日から満額の給与が発生しますが、患者数は初月から定常には届きません。分母だけが小さい期間が数か月続きます。
計画段階では、次の3つを別々に置くほうが判断を誤りません。1つ目は定常状態の人件費率です。2つ目は、患者数が計画の6割で止まった場合の人件費率です。3つ目は、その状態が何か月続いたら融資の返済が滞るかという月数です。3つ目が最も重要で、これが自己資金と運転資金の必要額を決めます。
具体的な形にします。看護師1名と医療事務1名を常勤で採り、事業主負担を含めて年収の1.2倍を見込むと、2名で年間およそ990万円、月額で82万円台の固定費になります。これに医師本人の生活費、家賃、リース料、借入返済が乗ります。開業初月から満額で発生するこの82万円を、患者数が立ち上がるまでの数か月間、どこから払うのかを先に決めておく必要があります。運転資金を借入に含めていない計画は、ここで詰まります。
逆算の結論は、多くの場合「最初は最小構成で開け、月次の実績を見て増やす」です。ただし最小構成で開けるには、前工程を機械と設計で吸収しておく必要があります。順序が逆になると、開業直後の混乱で患者の初回体験を落とし、リピートを失います。
有資格者を自院で雇うか、外に出すか
看護職員と事務職の次に検討されるのが、臨床検査技師や診療放射線技師です。診療科によっては検査が収益の柱になるため、常勤で置く判断もありえます。
賃金水準を押さえておきます。以下は令和7年賃金構造基本統計調査の企業規模10人以上(男女計・産業計)の数値で、上の表の企業規模10〜99人とは集計区分が異なります。この2職種は10〜99人区分の公表値が得られないため、比較相手の看護師も同じ10人以上区分の数値で並べています。臨床検査技師のきまって支給する現金給与額が33万400円、年間賞与その他特別給与額が85万5,100円、診療放射線技師は37万6,400円と104万8,000円で、同区分の看護師36万5,900円・85万6,400円より高い水準にあります。開業初年度に常勤で1名置くと、事業主負担を含めて年間600万円前後の固定費になります。
一方で、検体検査は医療法第15条の3の規定により業務委託が認められており、施行規則第20条では、委託する場合に当該検査に係る設備を設けないことができるとされています。この条文は病院の施設基準に関するものですが、検査の外部委託という選択肢そのものは診療所でも一般的に用いられています。画像の読影についても、遠隔読影という形で外に出す運用があります。
判断の軸は、検査件数が読めるかどうかです。件数が安定していれば自院で持つほうが1件あたりのコストは下がりますが、件数が読めない段階で常勤を置くと、稼働率の低い固定費になります。開業初年度は外部委託で件数の実績を作り、委託費が常勤1名の人件費を超えた時点で内製化を検討する、という順序が固定費の観点では合理的です。
なお、この判断は設備投資と連動します。検査機器をリースで入れると、リース料も固定費として毎月乗ります。人を雇うか外に出すかの比較は、人件費だけでなく機器のリース料と保守料を含めた総額で行ってください。
雇用形態の設計: 常勤かパートかは、社会保険の適用ラインで変わる
人数が決まったら、次は雇用形態です。ここは社会保険の適用要件を知らずに設計すると、後から負担が変わります。
事業所側の適用: 医療法人と個人開業で違う
法人であれば、常時従業員を使用する事業所は健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。個人開業の場合は、法定の業種に該当し、かつ常時5人以上の従業員を使用する場合に強制適用です。医療業は法定業種に含まれます(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。
したがって個人開業で従業員4名までの構成は、健康保険・厚生年金保険の強制適用の外に置かれます。任意適用の申請という選択肢はありますが、採用競争力の観点では社会保険の有無が応募数に効きます。5人目を採る判断は、人件費だけでなく社会保険の適用が一気に立ち上がる判断でもある、と認識しておく必要があります。なお労災保険は従業員1人でも加入義務が生じ、雇用保険も要件を満たす労働者について適用されます。
短時間労働者の適用: 週20時間のラインと、これから動くスケジュール
パート採用で効くのが短時間労働者の適用拡大です。現行の要件は、週の所定労働時間が20時間以上、賃金が月額8.8万円以上、2か月を超える雇用の見込み、学生でないこと、および勤務先の企業規模要件です(日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」)。
このラインは今後動きます。2025年6月に成立した年金制度改正法により、企業規模要件は段階的に撤廃される方向です。厚生年金保険の被保険者数で見て2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月に撤廃という順序が示されています。あわせて賃金要件の廃止も予定されています。
開業計画の意味するところは単純です。「週20時間未満のパートを複数」で社会保険料を回避する設計は、数年後に前提が崩れる。 10年で返す融資を組むなら、適用が広がった後の人件費で損益分岐を引いておくべきです。
有期契約は「期限」を先に決めて使う
開業初年度は患者数が読めないため、有期契約を使いたくなります。使い方の前提として、労働契約法第18条により、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みによって無期労働契約に転換します。これは努力義務ではなく、申込みがあれば無期契約が成立する仕組みです。
したがって有期契約は「更新するかどうかを毎回考える」ものではなく、更新回数の上限と通算期間の上限を就業規則と契約書にあらかじめ書いておくものです。更新の判断基準を書かずに繰り返し更新し、業績が落ちたところで雇止めをすると、更新の期待が生じていたと評価される余地が出ます。設計は開業前に社会保険労務士と詰めてください。
段階採用のタイムライン: いつ声をかけ、いつ入れるか
人数を決めたあと、実務で効くのは投入時期です。全員を開業日にそろえると、教育が開業日に集中し、最も混乱する時期に最も不慣れな状態になります。
採用活動の起点は、保険医療機関の指定申請と内装工事のスケジュールから引きます。求人の掲出から内定までに要する期間は職種と地域で大きく異なりますが、常勤の看護職員は募集期間を長めに見る必要があります。前職の退職予告期間も入るため、入職日は内定から1か月から2か月後になることが多いです。
投入の順序としては、レセプトと会計を担う事務職を最初に固め、次に看護職員を入れ、開業日の前にレセコンと電子カルテを使った模擬診療を通すのが素直です。模擬診療は、システムの操作確認ではなく、受付から会計までを実際に通して滞留する工程を見つけるために行います。ここで詰まった工程は、開業後も同じ場所で詰まります。
開業後の増員判断は、感覚ではなく2つの実測値で行ってください。1つは来院から会計終了までの滞在時間、もう1つは予約枠の充足率です。滞在時間が延び、かつ予約枠が埋まっている状態が数週間続いたときが、増員か省人化投資かの分岐点です。滞在時間が延びているのに予約枠が埋まっていない場合、原因は人手不足ではなく工程設計側にあります。
人を増やす前に検討する選択肢
最後に、増員の代わりに検討できる打ち手を並べます。どれも初期費用はかかりますが、一度払えば終わる支出であり、毎月戻ってくる固定費とは性質が違います。
診療時間の設計。需要の山がない時間帯に診療枠を開けておくと、患者数に比例しない人員が必要になります。午前と夕方に山がある地域で昼から夕方まで通しで開けると、谷の時間にもスタッフを置くことになります。診療時間を需要に合わせるだけで、必要人数が1名変わることがあります。
予約制・時間帯予約。完全予約制にしない場合でも、時間帯予約で来院を平準化すると、ピークに合わせた人員配置が不要になります。待合の混雑はスタッフの負荷だけでなく、患者の離脱にも効きます。
レセコン・電子カルテの入力フローの一本化。受付で入れた情報を診察室と会計で再入力している構造だと、人手で吸収するしかありません。開業時のシステム選定は、機能の多さより入力が一度で済むかで見るほうが人件費に効きます。
自動精算機・キャッシュレス決済。会計の滞留は、事務職員の増員理由として最も出やすい項目です。ここを機械で外せるかを先に検討してください。
業務の外部委託。レセプト点検や給与計算は、常勤を置かずに外部へ出せる領域です。月額の委託費と人件費を並べて比べます。
省人化を検討した結果として「やはり1名必要」と結論が出るなら、それは根拠のある1名です。感覚で置いた1名とは、5年後の累計で1,000万円単位の差になります。
まとめ: 何人ではなく、どの順番で積むかを決める
- 無床診療所に医師以外の法定人員配置標準はない。医療法施行規則第19条は病院、第21条の2は療養病床を有する診療所が対象
- 人員要件を持つのは診療報酬の施設基準側。ただし地域包括診療加算の(9)は「時間外対応体制加算1〜4の届出/医師の常勤換算2名以上/在宅療養支援診療所」の三択で、医師を増やさずに満たせる経路がある。外来感染対策向上加算は専任の院内感染管理者を要する
- 賃金は令和7年賃金構造基本統計調査で確認できるが、全国平均であり地域差と経験年数差がある。相場として一本の数字に丸めない
- 事業主負担を含めて年収の1.15倍から1.2倍を固定費で見込む
- 短時間労働者の社会保険適用は段階的に広がる。回避を前提にした設計は数年で崩れる
- 増員の前に、診療時間・予約・システム・自動精算機・外部委託を潰す
本記事は制度と公表統計の整理です。自院の人員構成、社会保険の適用判定、雇用契約の設計、役員報酬との配分といった個別の判断は、社会保険労務士および税理士に相談してください。特定の人材紹介会社や求人媒体を推奨する意図はありません。
