「今の時間外労働は過労死ラインを超えているのか」という問いには、実は性質の異なる二つの基準が関わっています。一つは、脳・心臓疾患の労災認定で使われる「単月100時間・複数月平均80時間」という労災認定基準です。もう一つは、2024年4月から医師に適用されている時間外労働の上限規制、いわゆるA・B・連携B・C水準です。前者は労災請求の際に業務との関連性の強さを判断する目安であり、後者はそもそも働かせてよい時間の上限を定めた別の制度です。年960時間・年1,860時間という数字だけを見て「自分の勤務先の水準なら大丈夫」と判断するのは早計で、両者がどう対応しているかを知っておく必要があります。この記事では、両者の基準と関係、面接指導・健康確保措置の仕組み、自分の労働時間を確認する方法、労災請求の実務を、厚生労働省の資料に沿って整理します。
過労死ラインと医師の上限規制は、別の制度として理解する
結論から述べます。過労死ラインとは、脳・心臓疾患の労災認定基準が示す「発症前1か月間におおむね100時間、または発症前2か月間から6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められれば、業務と発症との関連性が強いと評価できる」という目安を指します。これは労災請求が行われた際に、労働基準監督署が業務起因性を判断するための基準であり、時間外労働そのものを禁止する規定ではありません。
一方、医師の時間外労働の上限規制(A・B・連携B・C水準)は、労働基準法36条に基づく特別条項付き協定の枠内で、そもそも医師を何時間まで働かせてよいかを定めた上限です。2024年4月1日から適用されており、A水準は年960時間未満、B・連携B・C水準は年1,860時間未満という年単位の上限が中心になっています。過労死ラインが「事後的な労災認定の目安」であるのに対し、上限規制は「事前に定められた労働時間の枠」という点で、制度の性質が異なります(図1)。
両者が無関係というわけではありません。上限規制のいずれの水準でも、時間外・休日労働が月100時間以上に達する場合は面接指導が必要になるなど、過労死ラインに近い数字が健康確保措置の発動基準として組み込まれています。全体は3つの層に整理できます。土台にあるのが一般労働者にも共通する脳・心臓疾患の労災認定基準(過労死ライン)、その上にあるのが医師固有の時間外労働の上限規制(A・B・連携B・C水準)、さらにその上に、上限規制の運用を支える面接指導・労働時間短縮計画といった健康確保措置が乗る構造です。まず一般労働者の過労死ラインの中身を確認したうえで、医師の上限規制がなぜ別の数字になっているのか、そして健康確保措置がどう機能するのかを順に整理します。
一般労働者の過労死ライン、45時間・80時間・100時間の意味
脳・心臓疾患(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤)の労災認定基準では、時間外労働時間を段階的に評価します。発症前1か月間におおむね45時間以内の時間外労働では、業務と発症との関連性は弱いと評価されます。45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、関連性は徐々に強まっていくと位置づけられています。そして発症前1か月間におおむね100時間、または発症前2か月間から6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています(厚生労働省)。
この基準は2021年9月、約20年ぶりに改正されました。改正前は、労働時間の基準を満たさない場合、労働時間以外の負荷要因は補助的にしか考慮されていませんでしたが、改正後は労働時間が基準に近い水準であれば、勤務間インターバルが短い勤務、休日のない連続勤務、出張の多い業務、身体的・精神的負荷を伴う業務といった負荷要因を総合的に考慮して労災認定できるようになりました。時間外労働の数字だけを見て「基準に届かないから対象外」と判断できない仕組みに変わっています(図2)。
医師の勤務は、当直明けの連続勤務や、拘束時間が長いオンコール対応など、この負荷要因に該当しやすい働き方を含んでいます。時間外労働の数字だけを見て「45時間を超えていないから問題ない」と判断せず、連続勤務や勤務間インターバルの実態も合わせて確認する必要があるのは、この改正の趣旨によるものです。
過労死ラインという言葉が指すのは、あくまでこの労災認定基準における目安であり、その時間を超えたら即座に労働災害と認定されるという保証ではありません。逆に、基準に届かない時間外労働であっても、他の負荷要因次第では労災認定される可能性があります。
医師には別の上限がある、A・B・連携B・C水準の中身
一般労働者にも時間外労働の上限(原則月45時間・年360時間、特別条項でも単月100時間未満、複数月平均80時間以内)がありますが、医師については地域医療の継続性を確保する必要から、独自の上限規制が設けられました。この上限規制は、2019年の働き方改革関連法による一般労働者への時間外労働の上限規制導入時には医師には適用されず、応召義務との関係を整理する期間として5年間の猶予が設けられていました。その猶予期間を経て、2024年4月1日から適用されているのが、A・B・連携B・C水準です。
A水準は、診療に従事するすべての勤務医に適用される基本の上限で、年960時間未満(休日労働を含む)、月100時間未満が原則です。B水準・連携B水準は「地域医療確保暫定特例水準」と呼ばれ、救急医療など地域医療に欠かせない機能を担う医療機関(都道府県の指定を受けた医療機関)で、年1,860時間未満、月100時間未満まで認められます。連携B水準は、複数の医療機関で勤務することで年の上限を超える医師が対象です。医師の労働時間は、主たる勤務先と副業・兼業先(いわゆる外勤バイト)の労働時間を通算して管理することが原則になっており、主たる勤務先ではA水準でも、外勤先の労働時間を合算すると年960時間を超える場合には、主たる勤務先が連携B水準の指定を受けたうえで、通算した労働時間が年1,860時間の上限に収まるよう管理する必要があります。外勤先ごとに労働時間が別管理されているわけではない点は、当直バイトや健診バイトを掛け持ちする医師にとって見落としやすいところです。C水準は「集中的技能向上水準」で、臨床研修医・専攻医を対象とするC-1と、6年目以降に高度な技能を修得する医師を対象とするC-2に分かれ、いずれも年1,860時間未満です(図3)。
いずれの水準でも、連続勤務時間制限28時間、勤務間インターバル9時間の確保、それが取れなかった場合の代償休息という3点セットが健康確保措置として設けられています。A水準ではこの3点セットは努力義務ですが、B・連携B・C水準では義務になっています。年の上限時間が大きい水準ほど、健康確保のための仕組みが強く義務付けられる構造です。B・連携B水準は将来的な解消が既定路線で、2035年度末を目標に段階的な縮減・解消が予定されています。
B・連携B水準の適用を受けるには、医療機関が都道府県知事の指定を受ける必要があります。指定を受けるには、労務管理体制の整備状況や実際の時間外労働の実績を医療機関勤務環境評価センターが訪問審査し、その結果をもとに都道府県が指定の可否を判断します。指定は恒久的なものではなく、定期的な実績確認と更新の対象になっており、B・連携B水準の医療機関に所属しているからといって、年1,860時間まで無条件に働かせてよいわけではありません。C-2水準についても、対象となる医師自身が「高度特定技能育成計画」を策定し、第三者機関の審査を経る必要があるなど、水準ごとに個別の手続きが定められています。自分の勤務先がどの水準の指定を受けているか、また自分自身がどの水準の対象として計画されているかは、就業規則や36協定の特別条項を確認すればわかります。
同じ病院内でも、水準は診療科や個人の業務内容によって異なります。救急対応や周産期医療のように、地域で代替が利きにくい機能を担う診療科がB・連携B水準の対象になりやすく、研修プログラムに沿って症例経験を積む専攻医がC-1水準、専門領域でさらに高度な技能を修得する医師がC-2水準の対象になりやすい傾向がありますが、これは制度上の役割分担であって、水準ごとの優劣を意味するものではありません。同じ診療科の中でもA水準の医師とC水準の医師が混在することもあり、水準は病院単位ではなく、個々の医師の業務内容と申請に基づいて決まります。
なぜ一般則と医師の基準は数字が違うのか
一般労働者の過労死ラインは、月80時間・単月100時間という「月単位」の基準です。これに対して医師の上限規制は、年960時間・年1,860時間という「年単位」の基準が中心になっています。年960時間は月に均すとおよそ80時間、年1,860時間はおよそ155時間に相当しますが、これは単純な年間総枠の割り算であり、実際の運用では月ごとの上限(いずれも月100時間未満が原則)の中で、診療科の繁忙期と閑散期の差を調整する仕組みになっています。
数字が違う理由は、二つの制度の目的が異なるためです。過労死ラインは労災認定基準であり、発症した疾病と業務の因果関係を判断するために作られています。上限規制は労働基準法36条の特別条項に基づく労働時間規制であり、医師の応召義務や地域医療の継続性という医療政策上の要請と、医師自身の健康確保を両立させるために作られています。年1,860時間という上限は、過労死ラインを容認する数字ではなく、地域医療を支える医師の労働時間を段階的にA水準まで引き下げていく過程の暫定的な上限という位置づけです。上限規制は罰則を伴う労働基準法の規制でもあり、指定された水準の上限を超えて医師を働かせた場合、勤務先(使用者)は労働基準法119条に基づく罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象になり得ます。上限は勤務先にとっても遵守が前提の数字であり、超過が常態化している場合は、労務管理上の問題として指摘する根拠になります。
数字だけを見比べて「A水準の範囲内だから過労死ラインとは無縁」と判断するのは早計です。月100時間未満という上限は、労災認定基準の単月100時間に近い数字であり、上限ぎりぎりの働き方を続ければ、労災認定基準が示す「関連性が強い」目安にも近づくことになります。上限規制を守っていることと、健康リスクが低いことは、同じ意味ではありません。
自分の時間外労働を確認する方法
自分の状況を判断するために必要なのは、まず自分がどの水準の対象になっているかを確認することです。確認先は3つあります。就業規則(またはそれに準じる労働条件通知書)に適用される上限規制の水準が明記されているか、36協定の特別条項に定められた延長時間の上限が何時間か、そして勤務先が作成している労働時間短縮計画に自分の職種・診療科がどう位置づけられているかです。これらの文書は労働者に開示される性質のものであり、人事・労務担当部署に照会すれば確認できます。
次に確認するのは、実際の時間外労働時間です。自己申告制の勤務先では、当直・オンコールの拘束時間や研究時間の扱いが労働時間として正確に集計されていないことがあります。給与明細の時間外手当の金額から時間数を逆算する、入退室記録やICカードの打刻データを取り寄せる、電子カルテのログイン・ログアウト時刻を確認するといった方法で、勤務先の集計と実態にずれがないかを照らし合わせておくと、面接指導や労災請求が必要になった場面で根拠資料として使えます。月ごとの実績が、適用されている水準の上限にどれだけ近づいているかを継続的に把握しておくことが、過労死ラインとの距離を自己判断するための土台になります。
時間数を確認する際にもう一つ押さえておきたいのが、宿日直許可の有無です。労働基準法41条3号は、断続的な業務に従事する者について労働時間規制の適用を除外できると定めており、これに基づき労働基準監督署の許可を得た宿直・日直の時間は、時間外労働の上限規制やA・B・C水準の集計対象となる労働時間には原則として算入されません。厚生労働省は「医師、看護師等の宿日直許可基準について」(令和元年7月1日付け基発0701第8号)で、通常の勤務と同程度の業務密度が続く宿直・日直は許可の対象にならないという基準を示しています。裏を返せば、宿日直許可を得ている当直であっても、実態として通常勤務と変わらない対応が続いていれば、その時間は本来、時間外労働として集計されるべきものです。当直の名目上の扱いと、実際の呼び出し頻度・対応時間にずれがないかを確認しておくことは、自分の時間外労働を過小評価しないために欠かせません。
面接指導と健康確保措置、一般則と医師で仕組みが違う
長時間労働者への面接指導には、一般労働者向けと医師向けの2つの制度があります。一般労働者については、労働安全衛生法66条の8に基づき、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められ、本人からの申出があった場合に、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。申出がなければ、事業者に実施義務は発生しない仕組みです。裏を返せば、月80時間を超えていても、本人が申出をしなければ制度上は面接指導が行われないまま働き続けることができてしまうという弱点が、一般則の面接指導制度には残っています。
医師については、改正医療法108条1項に基づく「追加的健康確保措置」として、別の面接指導制度が設けられています。時間外・休日労働が月100時間以上になることが見込まれる医師に対しては、本人の申出の有無にかかわらず、面接指導実施医師による面接指導を実施することが管理者の義務です。A水準の医師については、疲労の蓄積が確認されない場合に限り、100時間に到達した後、遅滞なく面接指導を実施する取り扱いが例外的に認められています。面接指導実施医師は、医師免許を持ち、厚生労働省が定めるオンライン養成講習(面接指導実施医師養成講習)を修了していれば足り、産業医資格までは求められませんが、対象医師の勤務先の管理者がその面接指導を行うことはできません。同僚の医師が講習を修了して実施医師を務めているケースも珍しくなく、必ずしも外部の専門家が担当するとは限りません。面接指導の結果は、医療法施行規則71条1項に基づき5年間の保存が義務付けられています(図4)。
面接指導では、就業上の措置について「通常勤務」「就業制限」「就業禁止」の3区分で判定が行われます。就業制限と判定された場合、管理者は当直回数の削減、連続勤務の是正、労働時間そのものの短縮といった措置を、他の業務調整より優先して講じることが求められます。面接指導実施医師の判定に納得できない場合は、産業医や別の医師にセカンドオピニオンを求めることも制度上想定されています。産業医の選任要件や実務については、別記事の産業医になるには|資格要件と選任の手順を時系列で整理で整理していますので、面接指導実施医師との違いも含めてあわせて確認してください。
労働時間短縮計画、100時間見込みで作成、155時間超で措置が必須になる
面接指導と並ぶもう一つの健康確保措置が、労働時間短縮計画です。時間外・休日労働が月100時間以上に達することが見込まれる医師が在籍する医療機関は、あらかじめ労働時間短縮計画を作成することが求められます。計画には、当直や宿直の回数、タスクシフト・シェアの状況、複数主治医制の導入状況など、労働時間を短縮するための具体的な取り組みを記載します。
さらに、実際の時間外・休日労働が月155時間を超えた場合には、労働時間短縮のために必要な措置を必ず講じることが求められます。当直の免除やシフトの見直しなど、計画に記載した取り組みを前倒しで実行する段階に入ったと考えてよい水準です。B・連携B・C水準の指定を受けている医療機関では、計画の実施状況が指定更新の審査対象にもなるため、個々の医師の労働時間短縮計画への理解は、勤務先の指定継続にも関わってきます。
計画の実施状況は、都道府県ごとに設置されている医療勤務環境改善支援センターが相談窓口となり、社会保険労務士や医療労務管理アドバイザーが医療機関を支援する体制がとられています。勤務先の労働時間短縮計画が形だけのものになっていないか疑問がある場合、このセンターに直接相談することもできます。院内での相談が進みにくい場合の、もう一つの窓口として押さえておく価値があります。
労災請求の実務、何を、どこに出すか
自分の時間外労働が労災認定基準に近づいていると感じた場合、実際に労災請求を行うかどうかは別の判断になりますが、手続きの骨格を知っておくと判断がしやすくなります。脳・心臓疾患の労災請求は、勤務先を管轄する労働基準監督署に、療養補償給付たる療養の給付請求書などの所定様式を提出して行います。請求は労働者本人だけでなく遺族も行うことができ、請求権の時効は療養補償給付・休業補償給付が2年、遺族補償給付・葬祭料が5年です。
請求にあたって重要になるのが、発症前の労働時間を裏付ける記録です。タイムカードや入退室記録に加え、医師の場合は当直表、オンコール記録、36協定の特別条項、上限規制の実績記録(いずれの水準が適用され、月ごとの実績がどうだったか)が、労働時間を証明する資料になります。勤務先が労働時間を適切に記録していない場合でも、本人の手帳やメール送信履歴、電子カルテのログイン記録などが労働時間の推定に使われることがあります。請求後は、労働基準監督署が業務起因性を調査し、支給・不支給を決定します。決定に不服がある場合は、審査請求・再審査請求、さらに行政訴訟という不服申立ての手段が用意されています。
請求書の作成や資料収集を一人で進めるのが難しい場合、労働基準監督署の総合労働相談コーナーは無料で相談でき、請求そのものを行うかどうかを決める前の段階でも利用できます。手続きが複雑になりやすい案件では、労働問題を扱う社会保険労務士や弁護士に依頼することも選択肢です。家族が請求人になる場合は特に、本人が生前どのような勤務を続けていたかを、同僚や勤務先の記録から補って整理する作業が必要になります。
厚生労働省が公表した令和7年度の「過労死等の労災補償状況」によると、脳・心臓疾患の労災請求件数は1,254件(前年度比224件増)、支給決定件数は217件(前年度比24件減)で、うち67件が死亡事案でした。請求件数は増加している一方、支給決定件数は減少しており、請求すれば必ず認定されるわけではないことがうかがえます(図5)。
過労死等防止対策白書が示す医療分野の位置づけ
過労死等防止対策白書は、過労死等防止対策推進法に基づき、政府が毎年国会に提出している法定の報告書です。厚生労働省が公表している直近版(令和6年度版)の基礎となった「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和6年8月2日閣議決定)では、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界、芸術・芸能分野の8業種が、労災認定状況の調査研究の重点対象に位置づけられており、医療はその一つとして継続的に取り上げられています。白書には、重点業種における長時間労働削減の取り組み事例がコラムとして紹介されており、医療機関における勤務環境改善の事例も対象に含まれます。
過労死等防止対策白書が扱う「過労死等」には、脳・心臓疾患による死亡だけでなく、強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺、そして死亡には至らない脳・心臓疾患や精神障害も含まれます。この記事では脳・心臓疾患の労災認定基準を中心に扱いましたが、長時間労働は精神障害の労災認定にも別の基準で関わってきます。精神障害の労災認定基準は、時間外労働時間だけでなく、出来事の心理的負荷の強さを個別に評価する仕組みになっており、脳・心臓疾患の基準とは判断の枠組みが異なります。
過労死等防止対策白書は、個々の労災認定の可否を左右する文書ではありませんが、医療分野の労働時間の実態がどのように国の政策議論に反映されているかを継続的に把握できる資料です。図6は、脳・心臓疾患の労災認定基準と医師の上限規制、健康確保措置がどの時期に整備されてきたかをまとめたものです。自分の勤務先の労働時間管理が、この流れのどの段階に対応しているかを確認する材料として活用できます。
まとめ 基準の違いを理解したうえで、自分の働き方を確認する
過労死ラインは、脳・心臓疾患の労災認定における「単月100時間・複数月平均80時間」という目安であり、医師の時間外労働上限規制(A水準年960時間、B・連携B・C水準年1,860時間)とは、目的も基準の単位も異なる別の制度です。上限規制の範囲内で働いていることは、過労死ラインを下回っていることを直接保証するものではありません。月100時間以上の時間外・休日労働が見込まれる場合は面接指導、155時間を超えた場合は労働時間短縮の措置と、健康確保の仕組みは段階的に強化される設計になっています。
制度は毎年のように細部が見直されており、自分が研修医だった頃の理解のまま止まっている場合、適用される水準や面接指導の基準が変わっている可能性があります。自分がどの水準の対象で、月ごとの実績がどの段階にあるかを、勤務先の記録と照らして定期的に確認しておくことが、制度を正しく使いこなす第一歩です。
